研究課題
本研究は、食肉目野生動物を食料や漢方薬、毛皮として利用する中国および東アジア、ロシア極東地域の経済活動によって、絶滅危惧となったブタバナアナグマを含む中型食肉目5種を指標種として、生息地改善および経済的利用の抑止の両面から個体群復元のための保全策を提案する。ファインスケールとラージスケールにて個体群の遺伝的構造、社会生態、生息地保全のためのkey habitat、動物と人間との関わりを調査する。そして動物による種子分散をとおした保護区管理方法、および地域生態系の動物の役割についての地域住民への普及啓蒙内容を具体的に提案する。現在もなお拡大する野生動物市場問題の解決、また経済的利用により劣化した野生動物個体群復元のための地域アプローチ策は、アジア全域とロシア極東地域に適用することを目的としている。平成28年度は、主に以下の2点について継続調査と成果発表を行った。1.ロシアと東アジア地域におけるアジアアナグマなどの中小型食肉目の保全 昨年度に引き続き、ロシア地域と東アジア地域におけるハクビシン、アジアアナグマ、ニホンイタチ、シベリアイタチ、イイズナ、タヌキの遺伝的特徴の研究を実施した。また、ニホンアナグマでは九州地域での新たな大量駆除についての実態調査、カンボジアとラオスにおけるイタチアナグマ類の保護状況について調査を行った。以上の成果を、学会誌論文を中心に投稿し発表を行った。2.注目種の生態学的調査 ユーラシアアナグマの臭腺分泌物の分析については、新たに日本国内(高知)における調査を行った。また、比較対象地域であるブルガリア中央部における捕獲とサンプリング調査を行い、化学分析と成果発表を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は、論文発表を中心に研究成果の公表が非常に進展した。特に、アジア地域の野生動物保全の成果として、自然科学系のトップジャーナルであるNatureへ、アナグマ大量駆除についての意見掲載したことは大きな成果であった。遺伝子分析の成果は、Biological Journal of the Linnean Society、Biocheminal Systematics and Ecologyといった被引用率の高い雑誌に複数の内容が掲載された。生態学の内容は、Journal of Zoologyをはじめとして、Zoological Scienceに複数掲載された。
来年度は、計画最終年度にあたるため、論文発表を中心とした成果発表を引き続き行うほかに、国際学会(国際哺乳類学会議)におけるシンポジウム主催し、アジア地域やロシア地域の野生動物保全について、IUCN RDB委員会メンバーとの議論を行う予定である。日本や東アジア地域において生じている、野生動物の大量駆除や密輸の実態について、さらにデータ取得を行う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Zoological Science
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