研究課題/領域番号 |
26257405
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
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研究分担者 |
曽田 貞滋 京都大学, 理学研究科, 教授 (00192625)
柿嶋 聡 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(PD) (30648580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 周期ゼミ / 進化メカニズム / 米国 / 分子系統解析 / シミュレーション / 素数 / 大発生 / アリー効果 |
研究実績の概要 |
本年度は、2007年より開始した周期ゼミの学術調査を実施した。本年は、大発生する17年ゼミのブルードⅢと13年ゼミのブルードXXⅡを分布調査および標本の採集を実施した。学術調査では、13年ゼミの発生するルイジアナ州とミシシッピ州,オハイオ州のオハイオ川沿いに飛び地で分布している個体群の発生調査と標本採集を実施した。17年ゼミは、アイオワ州の州都デモイン市の周辺からイリノイ州までの広域な分布域を調査・採集した。さらに、幼虫や羽化直後の成虫のRNAを発現解析用に固定した。さらに、周期ゼミの体サイズや形態を7種間で比較して、その体長と成熟の関係を検討した(論文投稿中)。理論研究では、周期性の獲得についてのコンピュータ実験を実施して、氷河期による寒冷化が、周期性の獲得を促す可能性を見出した。現在、周期性獲得の論文は投稿中である。 さらに、これら進化理論の展開として以下の5つの論文を発表した。まず1つ目は、人間における寿命と運動能力の男女差を生物学的な適応的視点から説明した(Asanuma et al., 2014)。2つ目は、資源や環境の悪化における経済的なインセンティブにより、環境悪化が不可避で自動的に起ることを説明した (Clark and Yoshimura 2014)。3つ目は、多胚発生寄生寄生蜂で、多胚発生に関与するRNAを調べた(Inoue et. al. 2015)。4つ目は、タイランドの熱帯域の半乾燥林の林床に生えるショウガ植物が、葉裏を地面に着けて、裏面にのみ分布する気孔から土壌呼吸による高濃度の酸素を取り入れていることを実証した。大気中の二酸化炭素濃度の高かった中生代の気候に適応した進化とみられる。5つ目は、変動環境のリスク分散について、分散・移動を好むことは、進化的に不利になることがあることを明らかにした(Morita and Yoshimura)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の理論の中心的な目的である周期ゼミの周期性の獲得進化のモデル化に成功、第1報目の論文投稿にこぎつけたことは、大きな進展である。さらに、17年・13年のdecim, cassni, deculaの種群の体サイズの比較検証を行い、論文投稿をしたが、これは実証研究の新たな展開である。さらに、これら2通の主要な論文の投稿に加えて、様々な進化現象や環境変動や地球温暖化に関する論文を5報出版したこと、そのうち2報はNatureグループ誌のScientific Reports(インパクトファクターが5を超える)であることは非常に大きな成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
投稿中の2つのセミの採択を取り付けることがもっとも重要な課題である。さらに、本年度の学術調査を現在準備中である。本年度は、17年ゼミのブルードIVと13年ゼミのブルードXXIIIが発生する。17年ゼミは、テキサス州南東のダラス近郊から北方、オクラホマ州、アイオワ州へと分布しており、13年ゼミは、ルイジアナ州・ミシシッピ州東部から北方、テネシー州、イリノイ州へと続いている広大な地域で発生する。そこで、13年ゼミと17年ゼミを同時に並行して南から腸亜採集するために、レンタカー2台で調査をすすめる。 これらが学術調査に加えて、祖先種の知見のため、エゾチッチゼミ(北海道)や沖縄県でのセミや東南アジアでのセミの採集をすすめる。さらに、6年周期植物のコダチスズムシソウやその近縁種の調査を沖縄・台湾・東南アジアなどですすめる。 理論研究は、周期ゼミの周期性獲得の進化の詳細のモデル化や、その他の生物での環境変化・変動に対する適応の問題を扱う。さらに、実証研究では、周期ゼミや周期植物の遺伝子解析の手法の開拓など、さまざまな発展を試みる。
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