研究課題
①集団間の出会いをもたらす生態学的・社会的要因の分析:GPS レコーダーを用いて同時に追跡するボノボ3 集団、チンパンジー2 集団の位置を記録した。とくにボノボ3集団の出会いには季節的な偏りが認められ、食物の分布との関連性が認められた。また、集団の組み合わせによって出会いの頻度やパターンに大きな違いがあることが確かめられ、地域個体群内の構造が単にいくつかの集団が集まっただけの一様なものではないことが分かってきた。②出会いにおける雌雄の行動の分析:集団間の出会いにさいしての集団内、集団間の個体間交渉についてのデータを蓄積することができた。ボノボでは、1つの集団から他の集団に移籍した若いメスが、その2つの集団が出会ったときにどういう行動を見せるかという貴重な観察例が得られた。久しぶりに出自集団と出会った若いメスは、同世代の個体とは頻繁に毛づくろいなどを交わしたが、自分の母親とはほとんど交渉をもたなかった。移籍の前後でメスと母親との関係が大きく変化することが確認され、類人猿の父系社会を維持する近接要因の解明につながる観察例となった。③集団間の出会いと地域社会がメスの移籍におよぼす影響の分析チンパンジーとボノボの対象集団について、全観察日の確認個体の出席表をチェックし、どのような年齢で時集団を離れはじめ、どのような経過を経て最終的に移籍にいたるのかを分析した。また、集団間の出会いと移籍との関係を示唆する観察例もいくつか収集することができた。④メスの帰属と子どもの父親との関係の分析:マイクロサテライトの多型分析によって調査対象集団内の父子鑑定を行うため、糞・尿のサンプルを収集し、一部の資料についてDNA解析を行った。今後同様の試料収集と解析を進め、子どもの父親がその時点に集団にいるオス以外であるケースの比率を調べ、メスが帰属する集団以外のオスとの間に子どもを作っている頻度の指標とする。
2: おおむね順調に進展している
集団間の出会いという比較的まれな行動の収集に基づく研究であるが、とくにボノボで多数の事例が記録され、本研究のテーマに重要なヒントをもたらす貴重な観察例もあった。、チンパンジーでは今年は集団間の出会いの頻度が低かったが、次年度に期待したい。
①集団間の出会いをもたらす生態学的・社会的要因の分析:GPS レコーダーを用いて同時に追跡するボノボ3 集団、チンパンジー2 集団の位置を記録し、隣接集団間の相対的位置や動きの方向を解析する。これによって集団間の出会いが通常の遊動で偶然に起こったものか、一方または両方の意図的な接近によって起こったものか、出会いを回避した場合どの程度の距離でどちらの集団が回避したのかを調べる。また、集団間の出会いと食物資源の分布との関係を解明するため、Quick Bird衛星画像に上記の遊動データを重ねて分析する。②出会いにおける雌雄の行動の分析:チンパンジーでは、出会いは主としてオスによってリードされ、攻撃が起こることが多い。一方ボノボでは、メスが積極的に相手集団の側に入り込み、平和的な出会いを維持する傾向がある。こういった傾向について量的分析を進めるため、出会いの際の威嚇・攻撃行動、親和的行動、性行動などの行動を記録して分析する。③集団間の出会いと地域社会がメスの移籍におよぼす影響の分析:同様の父系集団をつくるチンパンジーとボノボでも、メスの移籍年齢や移籍に至る行動パターンには様々な違いが見られる。これら2 種について移籍に関する事例を収集し、一時的あるいは恒久的移籍の年齢、2集団間の関係、移籍の際の集団間の出会いの有無などを比較し、地域社会がメスの移籍にはたす役割について分析する。④メスの帰属と子どもの父親との関係の分析:調査対象集団の全個体から糞を収集してDNAを抽出し、マイクロサテライトの多型分析を行う。これにより、子どもの父親がその時点に集団にいるオス以外であるケースの比率を調べ、メスが帰属する集団以外のオスとの間に子どもを作っている頻度の指標とする。この指標を、種間および集団間で比較し、メスの繁殖戦略にとって集団と地域社会がどのような意味を持っているのかを調べる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)
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