研究課題
①集団間の出会いをもたらす生態学的・社会学的要因:利用可能な食物量や発情メスの数が集団間の出会いにどのような影響をおよぼすかにいついて、昨年度に引き続き野外調査によるデータ収集を行うとともに、果実量センサスの結果とあわせた分析を行った。集団間の移籍は、利用可能な果実量が多い時期に頻繁に起こっており、発情メスの数には大きく影響されていないことがわかった。②出会いにおける雌雄の行動の分析:昨年度に引き続き、調査対象集団のE1、PE、PWの間の出会いに際する雌雄の行動を記録した。とくに集団間の出会いの際の攻撃行動において、異なる集団に属するメスが協力してオスの攻撃に対抗するといった新しい行動が観察された。これらの結果については、論文の執筆をすすめた。③集団間の出会いと地域社会がメスの移籍におよぼす影響の分析:メスの集団間移籍がどういうときに起こりやすいかを分析した結果、そのほとんどが集団の平和的な出会いの時に起こっていることがわかった。こういった傾向がボノボのメスの集団間移籍を要因にしており、チンパンジーに比べて年少の段階での移籍を可能にしていると考えられた。④集団間、集団内の個体の遺伝的距離についての分析:オス間の遺伝的距離は集団間の方が集団内より大きいが、特に親しい関係にある2集団間では、オスの遺伝的距離が集団内と同レベルの小ささになっていることがわかった。このような集団間のオスの遺伝的距離の違いは、メスが特定の集団間でより頻繁に移籍することによって起こると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
研究の各項目について、着実にデータが得られ、分析も進んでいる。
最終年度のまとめに向けて、データの収集を継続する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Primates
巻: 58 ページ: 83-91
10.1007/s10329-016-0575-6
Beh Ecol Sociobiol
巻: 71 ページ: 55
10.1007/s00265-017-2277-5
PlosOne
巻: 12 ページ: e0174851.
10.1371/journal.pone.0174851
Bonobos: unique in mind, brain and behavior, Oxford University Press
巻: 書籍 ページ: 125-139
10.1093/oso/9780198728511.003.0009
巻: 書籍 ページ: 17-31
10.1093/oso/9780198728511.003.0002