研究課題/領域番号 |
26257410
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
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研究分担者 |
長谷川 利拡 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (10228455)
吉本 真由美 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (40343826)
石丸 努 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (40414635)
小林 和広 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90234814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 高温不稔 / イネ / 葯の裂開 / 受粉 / QTL |
研究実績の概要 |
水稲の高温不稔が発生しやすい中国長江の中流域において,2014年および2015年に中国のイネのコアコレクションより,葯の裂開,群落の構造に関する変異を広くカバーする12品種を群落状態で栽培し,高温による不稔の発生と受粉の動態に関するデータを収集し,解析を行った.2015年は気温が十分に上昇しなかった.2014年には8月上中旬に最高気温36℃に達し,不稔率は,開花中の品種の平均値で32%,最大値で64%に達した.この年の日々の不稔の発生率の変化は,開花期間の最高気温でよく表されたが,受粉動態との関連は認められなかった.一方,不稔発生率の品種間差異は,柱頭上で発芽した花粉が5粒未満の穎花の割合でよく説明された.これらの結果から,圃場における高温不稔の発生は,従来の制御環境下で指摘されてきたような受粉や花粉の発芽の不具合によるものではなく,花粉発芽の後のプロセスに現れる不具合によるものであると考えられた.しかし,安定した受粉や花粉発芽が高温不稔耐性に貢献することは確認された. 両年とも,柱頭上での発芽花粉が5粒未満の穎花の割合の日々の変化は,風速によりよく説明でき,気温との関係は明らかでなかった.2014年については,発芽花粉が5粒未満の穎花の割合の品種間差異の分散の72%が群落内の穂の深さと葯基部の裂開により説明できた.また,期間中に出穂した穂の不稔率の分散の55%が,穂の深さ,葯基部の裂開,開花期間3日間の最高気温の平均値で説明できた.これらの結果から,深い穂や,葯基部の大きな裂開は,受粉・柱頭上の花粉発芽の安定を通じて高温条件での稔実に貢献していることが示された.2015年のデータの詳細な解析は現在進行中である. さらに,制御環境下で開花させたBILsおよびCSSLsのイネの高温不稔耐性,葯の裂開特性についてQTL解析を行い,いくつかのQTLを同定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国では2ヵ年にわたり現地コアコレクションを用いた栽培試験を実施でき,解析が進みつつある.ミャンマーでは,2014-2015年乾期作に準備した現地品種の種子の純度が低く,質の高い十分なデータを蓄積することができなかったが,2015-2016年乾期作については,十分な純度の種子を入手し,順調に準備が進んでいる.以上のことからおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
中国については最低もう1年,ミャンマーについては2年,現地品種を用いた高温耐性圃場実験を実施する.さらに,本年度からは,インドおよびフィリピンを試験地に加え,気象条件と遺伝資源のバリエーションを増やす.
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