研究課題
平成27年度では主に以下の研究成果を得た。トリパノソーマ(Trypanosoma theileri)は、様々な反芻動物に感染する血液内寄生性原虫である。本年度は、原虫のCATL遺伝子を標的とした診断PCR法を活用して、スリランカで飼育されていた牛および水牛の集団におけるこのトリパノソーマの分布調査を行った。その結果、すべての採取地域で本原虫が検出され、全体の陽性率は、牛(7.6%)よりも水牛(15.9%)の方が高かった。続いて、PCR増幅断片の塩基配列を決定し系統樹解析を実施した。その結果、スリランカのCATL遺伝子配列は2つの主要な群(TthIとTthII)に分けられ、その両方に他国のCATL配列も多く含まれていた。スリランカの牛と水牛のCATL配列の大部分は独立して集団化していたが、2つの水牛由来の配列はスリランカ牛のものとほぼ同一であることが判明した。さらに、スリランカ水牛由来の塩基配列は、ブラジルの水牛およびタイの牛のCATL遺伝子配列と同じクラスターに属していた。本研究では、スリランカの牛と水牛に対する最初のPCR調査となった。さらに、水牛由来のCATL遺伝子断片のいくつかは同国の牛から決定されたものと類似していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度では、スリランカ国の家畜動物にとって重要な住血性原虫種であるトリパノソーマの分子疫学調査を完了し、トリパノソーマが牛及び水牛に分布していることと、その一部が両種間で行き来している可能性が明らかとなった。この成果より、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
平成28年度以降も、確立した遺伝子診断法及び血清診断法を用いてスリランカの牛、水牛、及びマダニに対する病原性原虫の分子疫学調査を実施するとともに、得られた成果よりスリランカに適した制圧プログラムの策定を試みる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Vet. Parasitol.
巻: 207 ページ: 335-341
10.1016/j.vetpar.2014.12.006
http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/topics20151007.html
http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/topics20150630.html