研究課題
申請者が行ってきた“スリランカにおける牛原虫感染症の疫学調査”から、スリランカの牛と水牛は高度に牛ピロプラズマ(バベシア及びタイレリアの総称)に感染している実態が明らかとなった。そこで、スリランカで発生している牛ピロプラズマ症の被害を軽減するために、これまで申請者らが開発してきた技術シーズを駆使して、1)スリランカに適した簡易診断法の確立、2)スリランカで牛ピロプラズマを媒介しているマダニの同定、及び3)予防ワクチン及び治療薬の効果検証を行ってきた。最終年度では以下の研究成果を得た。牛バベシア(Babesia bovis) のBOV57は、牛タイレリア(Theileria parva)のワクチン候補抗原として知られているP67のホモログで、バベシア寄生サイクルのマダニ期及び牛血液期の両方で発現する原虫抗原である。しかし、BOV57抗原のワクチンとしての潜在能力はこれまで調べられてこなかった。そこで本研究では、まず組換えBOV57(rBOV57)を作製し、マウス及びウサギにおいてrBOV57に対するポリクローナル抗体を作製した。マウス抗rBOV57抗体を用いた間接蛍光抗体法では、BOV57が血液寄生期メロゾイトの先端付近の原虫膜に局在していることが観察された。さらに、試験管内原虫侵入阻害試験において、ウサギ抗rBOV57抗体は、B. bovisメロゾイトの赤血球侵入を有意に阻害することが分かった。本BOV57遺伝子の多型性をスリランカ、モンゴル、及びベトナムの分離株間で比較した結果、よく保存されていることが判明した。これらの知見は、B. bovisのBOV57がメロゾイトの赤血球侵入に重要な役割を果たし、牛バベシア病に対する新たなサブユニットワクチンの候補抗原として活用できる可能性が示唆された。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Infection, Genetics and Evolution
巻: 54 ページ: 138~145
10.1016/j.meegid.2017.06.025