研究課題
エイズウイルスの起源については、遺伝子の多様性が最も高いことからアフリカ中央部であろうという説が研究者らの間でコンセンサスとなっている。しかし、いつ、何処で、どのように人間社会に拡がったのかという疑問に対しては、まだ完全に解答が出ている訳ではない。本研究は、エイズウイルス誕生からパンデミックに至る謎、即ちHIVはいつの時代に、如何なる場所で発生し、それがどのような経路で世界各地に拡散したのか、また現在も変異・リコンビネーション等によりその姿を大きく変化させつつあるHIVの未来予測を、誕生の地と考えられるコンゴ盆地の深奥部に踏み入って、分子疫学的に解明することを目的としている。平成29年度は、治安情勢が不安定、かつ飛行機便も僅少で交通アクセス自体が非常に困難なコンゴ民主共和国東北部奥地に位置するオリエンタル州Isiro町周辺地域を、現地の強力なサポートを得て史上初めて調査することに成功した。pol遺伝子フレーム中のintegrase遺伝子をコードする領域の塩基配列を元に分子系統解析した結果、全26検体中、サブタイプB/Dが9株、次いでサブタイプAが8株、他にCが2株で、他にKとグループO/Nに近い株が各1という結果であった。このサブタイプ分布状況は、同国の他の地域で得られたそれとは全く様相が異なっており、B/Dが非常に多いのが特徴である。なお、20世紀後半以降、欧米世界に広まったHIV株は所謂B型である。ところが、HIV発祥の地と目されたコンゴ盆地(コンゴ民主共和国、およびコンゴ共和国)では、これまで多種多様な遺伝子型が報告されているものの、B型の株がほとんど見つかっていないという謎が存在していた。今回の結果は、このギャップを埋めるものであり、同国の東北部から抜け出したHIVが半世紀以上の時間をかけて世界各地に拡散した可能性が高いと考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 印刷中 ページ: -
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