研究課題
我々は回虫感染が喘息症状(反復喘鳴)の発症に及ぼす影響をこれまで検討してきた。バングラデシュ農村部の小児で抗回虫IgE高値が反復喘鳴の危険因子であると報告したが、この主張は広く認められているわけではない。そこで今回は反復喘鳴とTh1、Th2、Tregの免疫応答の関連を検討し、抗回虫IgE抗体が喘鳴の危険因子となるか再確認をすることを目的とした。バングラデシュ国際下痢性疾患研究所(icddr,b)(International Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh )との国際共同研究である。バングラデシュ農村のマトラブ地区の5歳児全員のうち同意の得られた児を対象とし、質問票で喘鳴群と非喘鳴群を同定し、それぞれの群のThリンパ球サブセットの解析、便検体での寄生虫感染の有無の検査、サイトカイン用解析用の血液検体の採取を計画した。結果:1800人に調査への参加を依頼し1685名から同意を得た。喘鳴群全員145名と無作為抽出した同数の非喘鳴群のうち、それぞれ126名と110名より血液・便検体を、それぞれ64名と57名よりリンパ球サブセット用検体を採取した。同定された現在喘鳴群は8.9%であり、2001年の16.2%(1587名中)から有意に減少した(p<0.0005)。2001年のこの地域の反復喘鳴の危険因子は、抗回虫IgE抗体・幼少時の下気道感染の既往・遺伝素因・燃料としての枯葉の使用であった。2001年からこの間、この地域では公衆衛生対策としてHib・肺炎球菌ワクチンの普及と国家寄生虫対策による駆虫が進んだ。解析はまだ途上ではあるが、有病率の減少にはこれらの対策が寄与している可能性がある。また2変量解析で、抗生剤の使用経験群で喘鳴のある率が有意に高かったのも新事実である(p<0.0005)。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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