マルチ計測されたスパイク時系列データからニューロン間の結合を推定する研究について,これまでにもcross correlation 法と一般化線型モデルGLMによる方法を吟味して結合強度に応じてどの程度の時間,スパイク列を計測すれば結合の存在を統計的に決定できるかについての考察を進め,学会発表も行った.準備的解析の結果,たとえば0.1mV の興奮性シナプス後電位の結合の推定には1000 秒程度のスパイク計測が必要とされる,という結論が得られつつある.この結果は,観測者はこのレベルの結合については10 分より短い時間スケールの構造変化をとらえることは出来ない,ということを意味する.ただし,各結合の変動は検知できなくとも集団としての変化を検知できる余地はあるので,そのような検知がどのような条件で可能になるのかという問題は理論的のみならず実践的にも重要になる.
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