研究課題/領域番号 |
26280008
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
丹後 俊郎 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 教授 (70124477)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空間疫学 / 疾病集積性 / 環境統計 |
研究実績の概要 |
本年度は「時空間的に成長している突発的事象を適切に検出できる方法」を中心に検討してきた。その結果、まず(1)基本的な空間スキャン統計量の主要エンジン部分は、すでに申請者らの開発してきた時空間スキャン統計量(Biometrics, 2011)の制約付き尤度比検定統計量とし突発的事象の起こる空間(地域)の形状を任意の形状とした。次に、(2)発生患者数の時間的変動に頻繁に観察される「ポアッソン分布のバラツキを超えた過分散」を処理するために、負の二項分布を導入し、これまでのサーベイランスシステムの一つの弱点であった第一種の過誤の確率を正しく、事前に設定した有意水準を担保する方策を検討。次に、(3)時間的な広がりに加えて空間的な広がりを検出するための新しい空間的勃発モデル(Spatial Outbreak model)を検討している(来年度へ継続)。特に、広がりの空間的な形状に依存することのないエフィシェント・スコア検定統計量を導出できたことは一つの大きな成果と考える。
これらの理論的な検討成果を、試験用の小型モデルを作成して、まず、Monte Calro シミュレーションによる方法論の妥当性の検討を行い、開発したモデルが突発的生起事象をよく表現できていることを明らかにできた。次に、応用例として、北九州市内の小学校欠席サーベイランスへ適用し、これまでの空間的広がりの検出感度にある程度の改善が見られた。現在、これらの成果に加えて、論文の構成に必要な「従来の方法との比較検討(シミュレーション研究)」を来年度実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究ならびにシミュレーションによる研究成果の妥当性の検討も予定通り進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず、前年度から実施してきた「時空間的に成長する突発的事象を検出できる方法の開発」に関する研究を継続するとともに、並行して「医薬品の市販後調査における医薬品特異的な有害事象の検出に関する新しいスキャン統計量の開発」を着手する予定である。
「医薬品の有害事象検出に関する研究」では任意の薬剤と任意の有害事象とのペアを「1 つの地域」と定義し、それぞれの「地域」の有害事象の頻度を疾病(突発事象)の頻度と考える。さらに、薬剤間の距離を(1) 化学構造式等から、あるいは、(2) 薬剤間の階層構造を利用して定義すると「有害事象(疾病) の集積薬剤グループ(集積地域)」が定義でき、形式上スキャン統計量と同じ統計量が構成できる。したがって、その尤度比が最大となる地域群、すなわち、薬剤と有害事象のペアのグループ、が有害事象が最も集積しているクラスターと推測できる。この方法を、(A) 現実の有害事象の発生頻度と類似のパターンを想定したシミュレーション、(B) 米国FDA のAERS データ、により、既存の三つの統計手法と比較検討する。三つの統計手法とは、(1) イギリスの医薬品規制当局MHRA で使用されているPRR(Proportional Reporting Ratios) 法、(2) アメリカ食品医薬品局FDA で使用されてるGPS ( Gamma-Poisson Shrinker ) 法それに、(3) WHOのモニタリングセンターで使用されているBCPNN( Bayesian Confidence Propagation Neural Network) 法である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は研究の最終年度に当たり、次年度に交付される研究費から判断して、研究成果の論文作成および投稿に要する費用(英文校閲費、雑誌掲載料など)が少々足りなくなると想定されるため
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の論文作成および投稿に要する費用(英文校閲費、雑誌掲載料など)に充当する予定
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