研究実績の概要 |
本年度は、前年度で理論的な検討により得られた成果に基づいて「時空間的に成長する突発的事象を検出できる方法の開発」に関するシミュレーション研究を実施するとともに、 Kulldorff (2001), Sonesson (2007), Takahashi et al.(2008)との性能比較を実施した。その結果、他の方法より、帰無仮説の下でのパワー(サイズ)、検出力など優れていることが確かめられた。この成果の一部はStatistics in Medicineに掲載され、それを応用した研究がBMC Infectious diseasesに掲載された。
一方、「医薬品の有害事象検出に関する研究」に関しては、米国FDA のAERS データを利用し、任意の薬剤と任意の有害事象とのペアを「1つの地域」と定義し、それぞれの「地域」の有害事象の頻度を疾病(突発事象)の頻度と考えた。さらに、薬剤間の距離を(1)化学構造式、(2) 薬剤間の階層構造を利用して定義し「有害事象(疾病) の集積薬剤グループ(集積地域)」を定義し、スキャン統計量を構成した。この方法を、既存の三つの統計手法、(1)イギリスの医薬品規制当局MHRAで使用されているPRR法、(2)アメリカ食品医薬品局FDAで使用されているGPS法、(3)WHOのモニタリングセンターで使用されているBCPNN法、と比較検討してきたが、薬剤間の距離を計算する方法に手間がかかり、年度内での成果は得られていない。研究の更なる継続が必要である。
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