研究課題/領域番号 |
26280028
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
峰野 博史 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40359740)
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研究分担者 |
木谷 友哉 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40418786)
猿渡 俊介 静岡大学, 情報学部, 講師 (50507811)
樫原 茂 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (60380739)
水野 忠則 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (80252162)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | モバイルネットワーク / データオフローディング |
研究実績の概要 |
遅延耐性のあるモバイルデータ通信に対し,データの送受信タイミングを適切に制御することで,時間的,空間的,通信路的な3次元で空間利用効率を最大化させるモバイルデータ3Dオフローディング手法の確立を目指し,MDOP (Mobile Data Offloading Protocol) の詳細設計を進めた.特にMDOPの時間的オフローディングにおける具体的な処理,実現可能性について検討し,ネットワークシミュレーションを用いて評価を行った.時間的局所性を再現した評価シナリオで,時間的に集中していたeNBの負荷を分散し,予め設定した許容負荷まで抑えられることを確認した. また,ネットワークシミュレータの端末モデルとして仮想マシンを連携できる High Fidelity Emulation Environment (HiFEE)の研究開発を進めた.無線LANシステムの評価環境として,実機環境やシミュレーション環境が用いられるが,両者にはトレードオフ関係がある.実機環境の場合,実環境データを取得可能であるが,多数のノードに対する費用,実験場所確保の困難さ,電波伝搬の再現の困難さが課題となる.一方,シミュレーション環境の場合,通信環境全体をモデル化することで実機環境の課題を解決可能であるが,端末モデルの実機動作に対する抽象度が高いため,実機環境とは異なるデータが出力される.HiFEEでは,シミュレータの端末モデルとして仮想マシンを使用することで,実機動作に忠実な端末モデルを作成するだけでなく,仮想マシンに仮想無線LANデバイスを実装することで,OS標準のドライバで無線LANを模擬可能とする.研究開発したHiFEEの実機忠実度を評価した結果,TCPでは実機との誤差6.3%,UDPでは誤差1.7%の無線LANスループットを模擬できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モバイルデータ通信の時間的・空間的局所性を考慮し,モバイルデータ通信をオフローディングするモバイルデータ3Dオフローディング手法(MDOP)の詳細設計を進めた.想定環境,ネットワークアーキテクチャ,状態遷移,通信フロー,オフローディングポリシ,送信レート制御手法などについて,時間的局所性を解消する時間的オフローディングの評価も行った.時間的オフローディングでは,UEやeNBの状態に応じて送信レートを制御し時間的局所性を解消する.そこで,局所性シナリオ,普及過渡期シナリオを想定しネットワークシミュレーションで評価した.まず,ネットワークシミュレータへ実装したMDOPの動作検証を行い,各評価シナリオについて,UEに滞留するキューサイズのフェアネスに関して評価を行い,提案する送信レート制御手法によってUE間のフェアネスを意識しつつeNB負荷の時間的局所性を解消できることを確認した. High Fidelity Emulation Environment (HiFEE)の構築に関して,ネットワークシミュレータと仮想マシンの組み合わせに仮想無線LANデバイスを用いることで,実機の無線LAN通信の高忠実な模擬実現を目指した.HiFEEは多くのネットワークシミュレータや仮想マシンに適応できるが,まずは離散事象シミュレータのScenargie 1.8と仮想マシンのQEMU 2.1.2をそれぞれ改良した.QEMUにはQUALCOM Atheros社無線LANデバイスであるAR9160を模擬可能な仮想無線LANデバイスを追加し,Scenargieに対して無線LANフレームを送受信可能な環境を実現した.研究開発はかなり難航したが,何とか不具合なく性能評価できる水準の実装に成功し,TCPやUDPの無線LAN通信に関して実機忠実度の評価を実施できた.
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今後の研究の推進方策 |
時間的オフローディング,空間的オフローディング,通信路的オフローディングまで意識したモバイルデータ3Dオフローディング手法の詳細特性評価を進める.特にUEの移動によるハンドオーバー時や,時間的と空間的を組み合わせた際のMDOPアルゴリズムの検討を行い,空間利用効率の最大化を図る.また,HiFEEを用いたMDOP評価の準備を進め,実証実験との連携を意識してAndroidエミュレータによる仮想マシンとの連携を実現し,モバイルデータ3Dオフローディング手法の詳細特性評価を進める.シミュレーション上にエミュレートしてインポートしたプログラムは,シミュレーションで分析された結果に基づいて改良・再評価できるため,最終的なプログラムを実機に戻すことで実システム詳細設計の完成度を向上させられる相乗効果を図る.
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