研究課題/領域番号 |
26280030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡部 寿男 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (20204018)
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研究分担者 |
中村 素典 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 特任教授 (30268156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インターネット高度化 / 情報システム / ネットワーク / 暗号・認証 / セキュア・ネットワーク / Web / P2P / Pub/Subメッセージング |
研究実績の概要 |
本研究では,インターネット本来の自律分散の考え方に基づき,ブログやSNSなどのメッセージ型Web サービスを提供する複数の事業者を緩やかに連携させることで,グローバルなスケールのWeb情報共有基盤を,特定の事業者に依存することなくオープンなアーキテクチャで実現することを目的とし.P2P ファイル共有ネットワークを通じてメッセージデータを共有することで,フラッシュクラウドと呼ばれる急激な負荷の増加に対して高い耐性を持つと同時に,認証連携とグループ管理,電子署名・暗号化を用いて,インターネット上に広く流 通する情報がセキュリティとプライバシー上の要件を満たすようなシステムを構築している. 平成27年度は,P2Pネットワークを介してコンテンツを多くのWebサーバ間で共有させアクセスの負荷を分散させることと,コンテンツが多くのWeb サーバ間で共有される状況においてセキュリティやプライバシーの問題を解決することの両立を目指して,要素技術の開発を行った.具体的には、P2P型の情報発信システムにおいて,発信者の仮名性(pseudonymity)を担保しつつ,テロ予告など,違法な情報発信であるとP2Pネットワークに参加する運用者の大多数でコンセンサスが得られる場合には,発信者の追跡が可能(tracable)な仕組みについて,要求要件の明確化とその実装について検討し,電子署名を用いたシステムを設計・実装した.また,それとともに,発信者の認証と実際の情報発信を認証プロキシを介して分離することで,発信者の匿名性を向上させる仕組みも提案し実装した. また並行して,Webサーバ自体の性能向上や,無線環境下で動作するWebクライアントにおいて体感上の表示速度を向上させるための工夫についても検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P2P型ネットワークシステムにおけるPub/Subメッセージングでの仮名性と発信者追跡可能性の追跡という困難な課題に対し解決策を提案し実装したこと、認証プロキシを介することで発信者の仮名性を高める工夫の提案したことなど、本研究の重要課題において解決がみられており、システムの鍵となる要素技術が開発できてきておりおおむね順調と判断している。 一方、動的なものも含めたWebサイトのコンテンツをURN 型の識別子で扱えるようにすることについては、検討は進めているものの成果発表できる形にはなっておらず、研究を加速する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果をブラッシュアップして国際会議やジャーナルへの論文投稿を積極的に行うとともに、開発した要素技術については単体として用いることができる形でオープンソースソフトウェアとしての公開も目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は方式検討とプロトタイピングが中心であったため、予備実験に必要な物品については研究室に既存の設備を利用することでまかない、またプロトタイプソフトウェアの開発も大学院生の研究の一環として行われたため謝金を支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、提案方式に基づく一定規模の実験環境の構築と、成果発表のための旅費、さらにオープンソースソフトウェアとして公開できる品質のソフトウェア開発(マニュアル等ドキュメント作成を含む)と複数のシナリオにもとづく実証実験のための人件費や謝金を見込んでいる。
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