研究課題/領域番号 |
26280032
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
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研究分担者 |
多田 知正 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (10301277)
成瀬 誠 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所, 研究員 (20323529)
作元 雄輔 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (30598785)
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (60509058)
村田 正幸 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80200301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ネットワーク / 共鳴 / 運動エネルギー / 相互作用 / ユーザ行動 |
研究実績の概要 |
ユーザとネットワークの共鳴現象の特性を理解し,システムの安定運用技術に結びつけるために,本年度は二つの観点から研究を進めた. 一つは,ネットワーク上で起こるユーザ間のアクティビティ伝播を理解するため,ユーザ間のある種の非対称相互作用によって生じるダイナミクスを,ネットワーク上の振動現象としてモデル化した.このモデルによるノード毎の運動エネルギーは,特別な場合によく知られたノード中心性指標を再現し,既存のノード中心性概念の拡張指標を与えることを明らかにした.また,振動現象を利用して社会ネットワーク構造を推定する「ネットワーク共鳴法」の提案を行った.これは,従来のトラヒック量などの観測からリンクを推定する方法と異なり.互いの影響の強さを推定するものである.例えば「友情の強さ」は交換するメッセージの数とは必ずしも対応しない.ネットワーク共鳴法とは,このような社会的な意味を伴う関係性の強さを定量化するための基本技術に関するものである. 二つ目は,ユーザの挙動をネットワーク側から制御し,結果的にユーザとネットワークの相互作用を適切に管理するための心理的なシステム制御法に関するものである.被験者を用いた実験を実施し,システムの処理状況を示す表示とユーザ行動の関係を分析した.これにより,ユーザ心理を利用してシステム側からユーザの集団挙動を制御するための基礎検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度に提案したネットワーク上の振動モデルは,これまで知られている各種のノード中心性指標(次数中心性,媒介中心性,PagheRankなど)を特別な場合として含み,ノード中心性の概念を統一的に説明可能なモデルを与えていることが明らかになった.更に,ノード間相互作用の非対称性や情報源の位置の依存性,時間による状態変化など,様々なファクターを考慮した一般的指標を構成することが可能であり.当初予想を超えた成果に結びつきつつある.
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今後の研究の推進方策 |
ネットワーク上の振動モデルについては,各種のノード中心性指標を統一的に解釈する枠組みを整備し,振動モデルがネットワーク上の各種のアクティビティに関する underlying structure であることを明らかにしていく.また,その応用例としてネットワーク共鳴法を用いた社会構造の推定であるが,現在,ネットワーク構造を表す行列の固有値を推定する方法に目処が付いたため,固有ベクトルの推定技術の開発を進める.固有値と固有ベクトルが共に推定できれば,観測によって背後のネットワーク構造(行列の成分)を推定することが可能になる. ユーザ心理を利用した制御については,昨年度の実験に加えて新たに被験者を用いた追加実験を行う予定で,観測データの積み上げにより具体的な技術に結びつける.特に,過去の研究においては被験者へのアンケートなどによる質問方法の違いなどにより,互いに矛盾する結果が乱立して報告されている状況である.このような状況から技術的な一歩を踏み出すために,被験者の感情を言葉で説明させるのではなく,ユーザの行動(限られた選択肢からの行動の選択)を直接観測することで,心理実験に伴う曖昧さを回避する対応策を検討中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表のための旅費について,経済的なチケットを工夫して節約することが出来たため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であり,成果発表の機会も多いことから,旅費として使用する.
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