研究課題/領域番号 |
26280034
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 幹 関西大学, システム理工学部, 教授 (30210561)
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研究分担者 |
萬代 雅希 上智大学, 理工学部, 准教授 (90377713)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネットワーク / コンテンツ指向 / トラヒックエンジニアリング / 輻輳制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,「どこから」コンテンツを得るかには関心がなく,「どの」コンテンツを得るかという観点にのみ関心があるというコンテンツ指向ネットワーキングへネットワークアーキテクチャが大きく変化する際に,トラヒック制御がどのような形で進化していくべきかという重要な研究課題を取り扱う.具体的には,これまでのロケーション指向アーキテクチャで実現されていた送信駆動型のトラヒック制御から脱却し,コンテンツをどこから得てもよくそれが「どの」コンテンツであるかにのみ関心があるコンテンツ指向アーキテクチャに基づく,まったく新しい受信駆動型新世代トラヒック制御の開発を目的とし,研究を遂行してきた. 平成26年度は,計画通り以下の4つのテーマに注力して遂行した。(a) CONにおける受信型輻輳制御として必要な機能をエンド側ならびにNW側で整理し明確にする,(b) 前者で明らかにした機能間の連携を考慮しつつ,各機能を組み合わせて導入した新しい輻輳制御を開発する,(c) 経路制御と組み合わせた形で経路上のレート制御と経路間の連携を実現し,面的対応を実現する新しい輻輳制御を開発する,(d)これらを進める上でベースとなるCON評価ツールを開発する。 (a)では、ネットワーク側のルーチング機能との連携の必要性、エンド側のAIMDに基づく送信レート調整機能の必要性を検討した。(b)については、エンド側で輻輳部分を把握しつつ制御する手法を開発し、国際会議での発表を行う予定である。(c)については、経路制御と輻輳制御を連携させ、ルータにおける複数経路へのレート配分と、エンドにおけるレート制御との連携による、輻輳箇所に限定したレート削減を実現する全く新しい手法を開発した。この成果は、電子情報通信学会ネットワークシステム研究会で発表予定である。(d)においては、CON評価ツールを開発し、提案方式の評価に用いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、本研究課題において平成26年度は大きく分けて四つの研究テーマに取り組んだ。「(a) CONにおける受信型輻輳制御として必要な機能をエンド側ならびにNW側で整理し明確にする」に関しては、ネットワーク側のルーチング機能との連携の必要性、エンド側のAIMDに基づく送信レート調整機能の必要性を検討し、順調に進んでいる。「(b) 機能間の連携を考慮しつつ,各機能を組み合わせて導入した新しい輻輳制御を開発する」に関しては、エンド側で輻輳部分を把握しつつ制御する手法を開発し、国際会議に投稿し採択され、平成27年5月に発表を行った。「(c) 経路制御と組み合わせた形で経路上のレート制御と経路間の連携を実現し,面的対応を実現する新しい輻輳制御を開発する」に関しては、経路制御と輻輳制御を連携させ、ルータにおける複数経路へのレート配分と、エンドにおけるレート制御との連携による、輻輳箇所に限定したレート削減を実現する全く新しい手法を開発した。この成果は、電子情報通信学会ネットワークシステム研究会で6月に発表予定である。「(d)これらを進める上でベースとなるCON評価ツールを開発する」に関しては、基本部分の開発は終えたうえで、さらに提案方式の実装を行い、そのうえでの評価実験を行った。その成果として、国際会議ならびに研究会発表へと結実させており、研究課題全体において当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、平成26年度に取り組んだ4つのサブ課題を継続し発展させるとともに,平成27年度から下記2つのサブ課題について検討を開始する.i) キャッシュを考慮した輻輳制御、ii) 異種トラヒック対応型輻輳制御。 平成26年度に取り組んだ4つのサブ課題については、当初の計画通り発展させていく予定である。また、平成27年度に取り組むサブ課題については、以下のアプローチを計画している。 i) キャッシュを考慮した輻輳制御: キャッシュにおけるreplacementポリシと連携させることで,キャッシュから取得するコンテンツパケットのロケーションを間接的ながらある程度制御可能であるという観点から,キャッシュと連携しコンテンツ転送を効率的に行う輻輳制御方式の検討を進める. ii) 異種トラヒック対応型輻輳制御: CONでは,ユーザが要求を出し,それに対するレスポンスとしてコンテンツが返送されるという,Pull型通信が一般的である.ただ,テレビ会議などのリアルタイム伝送や,緊急情報配信など,一部にはPush型通信も必要である.本サブ課題では,このPush型通信トラヒックが,CONの主流Pull型トラヒックと混在するような,より現実的環境を想定し,両者の間で公平に資源配分を実現する輻輳制御の検討を行う.さらに,本サブ課題では,提案方式の無線マルチホップ環境への対応についても検討を行う.具体的には,無線通信に起因するパケット損失を考慮した無線CONのための新しい輻輳制御方式を考案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成26年度の物品費として申請していた、研究に使用するワークステーションが予定より安価に購入できたことで物品費に余りが生じた。また研究補助として大学院生を雇う予定であったが予定よりも短い期間である程度研究がすすんだため人件費に余りが生じた。さらに、その他として国際会議参加費や別刷印刷費等を考えていたが、成果として投稿した国際会議に採択されたものの発表が平成27年度になったため必要とならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、ワークステーションを購入予定である。なお平成26年度に余った物品費とあわせることでワークステーションとして高性能なものを購入し、研究効率を上げる予定である。また、効率的に研究を遂行するために、大学院生を補助として雇い、評価ツールの開発や実験結果の整理などを行ってもらう予定である。また、成果発表としての学会参加、成果発表の学術誌への印刷費などにあてる予定である。さらに、著名国際会議に出席し、コンテンツ指向ネットワークに関する最新動向を把握し、平成27年度以降の研究推進の方向性を最新情勢をみながら検討していく予定である。
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