研究課題/領域番号 |
26280043
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山田 耕二 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (00305294)
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研究分担者 |
坂本 尚久 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (20402745)
小野 謙二 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構 可視化技術研究チーム, チームリーダー (90334333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 可視化 |
研究実績の概要 |
全体表示にはOPBRを、詳細表示にはIPBRを使う統合PBR環境を構築した。両者をシームレスに接続するために、概要表示の際には、低解像度格子を使って、ユーザの指定した詳細表示領域に含まれる格子番号群を効率よく特定し、これらをIPBRに受け渡し、レンダリング処理を実現するプログラムを開発した。この処理による詳細度制御において、レンダリングの計算時間や画質がどの程度変化するのかを計測し、詳細表示対象の格子数とシームレス接続における滑らかさとの関係を明らかにした。具体的には、OPBRを使った概要表示結果に対して、対話的に興味領域を探索し、カメラの視体積情報から自動的に詳細表示領域を特定する機能を開発した。
82499ノードが6次元メッシュトーラスネットワークトポロジで接続されているK-コンピュータのような大規模並列環境向けにPBR技術を使った効率的な画像重畳法の開発を行い、プロセス数の増加に伴い、データ通信を含む描画速度がどう変化するのかを明らかにした。具体的には、大規模並列PBR環境向けの画像重畳手法として、全プロセスを有効活用する既存の並列画像重畳手法(Binary-Swap手法)に着目し、スケーラビリティの考察を行った。目的とした数万ノードオーダーでの並列画像重畳性能は数千ノードオーダーと比較すると著しく劣化することが明らかになった。対応策の一つとして段階的に処理を行うマルチステップ手法を考案した。また、82,944の様に2のべき乗でないプロセス数に対応できるために234スケジューリングを提案し、最終画像収集処理の効率化のためにMPI_Gather関数の利用を可能とするデータパディングとランク入替手法[3]の提案を行った。これらの提案手法を利用することで数万ノードオーダーでの大規模並列画像重畳の性能劣化を抑えることができることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定された詳細表示領域に含まれる格子データサイズがGPUメモリ格納可能と判断された時点で、高画質可視化が可能なIPBRに自動的に切り替えることができる機能実装において、想定を上回るサイズのボリュームデータに対して、詳細度制御を実現bンすることができた。具体的には、実験では、格子解像度3,072x640x640(約12億格子)、100タイムステップ(全体で6.4TB)の大規模血流計算データを使って有効性の評価を行った結果、OPBRで詳細度制御機能を使って10FPSを超える対話的な可視化ができ、詳細表示領域特定時には、2.1秒程度の時間でIPBRへの切り替えが可能であることを確認した。本実験結果より、OPBRを使った数億スケールのデータの対話的可視化が実現でき、詳細部分も画質を落とすことなく効率良くIPBRでの可視化ができることが明らかとなった。また、本開発で利用したOPBR、IPBR、および可視化基盤システムをオープンソースとして無償で公開した。
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今後の研究の推進方策 |
大規模並列環境におけるレンダリング処理の拡張性に関して、以下観点で有効性の確認を行う。 1 任意プロセス数に対応する画像重畳アルゴリズムの開発:N個の部分空間を任意のMプロセスで並列レンダリングする場合の効率の良い重畳アルゴリズムを開発する。ここでは、PBRによるボリュームレンダリングを対象に、まずN個のファイルをMプロセスに分散ロードする並列スケジューリングを実装する。その後、任意数のMプロセスに対して画像生成と重畳を行うアルゴリズムを開発し、ロードバランスと通信スケジュールとの関係を明らかにする。 2 PBR技術を使った画像重畳法の開発:大規模並列環境において本手法を適用する場合、計算機アーキテクチャに応じた高速化手法が重要となる。例えば京コンピュータは、全82499ノードが6次元メッシュトーラスネットワークトポロジで接続されている。このような超並列計算機上で効率の良い並列ボリュームレンダリングでは、各ノードで生成された部分画像を集めて重畳する戦略がとられる。超並列環境で画像重畳を行う場合、一般的にノードの増加に伴い画像生成よりも画像データ通信のコストの方が高くなる。このため、PBR技術を使った効率的な画像重畳法の開発を行い、プロセス数の増加に伴い、データ通信を含む描画速度がどう変化するのかを明らかにする。 3 統合PBR環境を使った可視化アプリケーションのプロトタイプ開発:1と2で検討した手法の評価結果をもとに、大規模並列環境における粒子ベースレンダリングを実用化するため、動的負荷分散手法の開発および統合PBR環境を使った可視化アプリケーションの開発を行う。京コンピュータなど大規模並列環境を使って計算科学を実践する研究者を対象にしたヒアリング等を通じて、研究活動における本可視化アプリケーションの有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に、OPBRにおいてコストの高い粒子の再生成を行うことなく不透明度の変更を実現するための動的粒子径決定手法を開発した。また、不透明度と粒子径との間に成立する関係式を使って、粒子の再生成を行わず、粒子径のみを変更する手法の開発を行った。その有用性の検証については、H27年度ではなく、本年度実施することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度において、粒子径を適応的に変更する場合と一定に保って粒子数を再生成する場合、それぞれに対して、OPBRを実施し、その画質や計算時間を計測し、あらかじめ特徴を埋め込まれたボリュームデータを使って、その発見に要した時間との関係を明らかにする。このために必要な技術情報を収集するための打ち合わせ旅費などに使用する。
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