研究課題
初年度において、自己の行為に対して随伴的に外集団成員が応答する場合、外集団成員に対する潜在的な差別が低下し、外集団成員に対する援助行動が促進されることが示された。本年度は、以上の研究を踏まえ、①自己の行為に対して他者が随伴して応答する場合、物理的な距離は同一でも相手の存在をより身近に感じるようになるか、②多感覚統合による自他統合により相手の視点や感情の取り入れが促進されるかを検討した。①については、自己の行為に対して相手が随伴して応答する場合、相手が同一の行為を示しても随伴性がない場合や無反応の場合に比べて、相手との知覚的距離が縮小することが、顔の残像サイズを測定し、エンメルトの法則により知覚的距離を算出した実験により明らかとなった。昨年度の研究と合わせ、社会的随伴性は時間と空間の感覚を変容させることが示唆された。②については、画面上の顔と同期して鏡面で同一の部位を撫でる場合、異なる位置を撫でる場合に比べて、より自他統合が生じ、感情などの相手の状態の転移が生じやすいことが示された。すなわち、自他統合が促進される条件において、相手が幸福顔をしていれば、自身も幸福感をより強く感じ、創造性も高まることが示唆された。同一の表情顔を提示しても、自他統合が生じる場合で強い転移が生じており、これはいわゆるミラーニューロンを通じた「共感」的な効果ではない。一般的に外集団成員に対しては向社会的行動が示されにくい傾向がある。意識的な努力によって克服する方法も多く提案されているが、同時にその限界も指摘されている。多感覚統合により内集団範囲を拡大する本課題の方法はその限界を克服する一つの方法となりうる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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