研究課題
本研究は、自己と他者とを包括する「わたしたち」という概念(”We”概念)の発達過程を解明することで、ヒト社会集団形成の重要な基盤となる、集団を同一化する心的機構の起源に迫り、現代における人間観・社会観を再構築する上で不可欠かつ新たな知見を提示することを目的としている。最終年度にあたる本年度は、(1)高密度コーパスをもちいた解析を取りまとめた。論文を現在執筆中であり、近日中に投稿予定である。(2):「わたしたち」と発話する際のニュアンス(人物Aの功績に対してBが「わたしたちが」と発話する、等)について、定型発達児と自閉スペクトラム症児各40名(計80名)の対面調査を実施し、TD児は敏感に反応し、直後のA,Bへの分配行動に反映させるのに対し、ASD児ではそのような傾向が見られないという新たな知見を得た。現在論文を執筆中である。また、自他融合的な視点である”We”概念と対置して検討せねばならない、他者への共感的な「気遣い」の発達的起源についても新たな知見を得た。一方の行為に他方が「気づいていない」場面を0-1才児に提示すると、1歳半の時点で、その行為の直後に「気づいていない」他方への注意シフトが見られることをあきらかにし、学術論文として発表した。この成果は新聞・TV等でも報道され、保育・育児現場への基礎研究からのアウトリーチとしても、社会的貢献を果たした。また、”We”概念を理論的に位置づける上で重要な「こころの理論」概念についても、研究代表者の翻訳書「ギャバガイ!」解説(近刊)において、歴史的背景を含めて取りまとめた上で検討し、論考としてのアウトプットもおこなうめどがついた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
孟憲巍・橋彌和秀(2016):「教え」、「気遣う」赤ちゃん-1歳半児は相手の知識や注意状態を踏まえてコミュニケーションする.Academist Journal.(研究コラム)
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Front. Psychol.
巻: 7.2065 ページ: ー
10.3389/fpsyg.2016.02065.
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