研究課題/領域番号 |
26280050
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
星 詳子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (50332383)
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研究分担者 |
精山 明敏 京都大学, 医学研究院, 教授 (70206605)
榛葉 俊一 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (80175398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感情制御 / 情動 / DOT / 近赤外線スペクトロスコピー |
研究実績の概要 |
社会脳とは、空気を読んだり、がまんしたりなど、人間関係や社会の営みの中で必要とされる脳機能を意味している。人と付き合う中で感情が生じ、その感情を制御することも社会脳とみなすことができる。ひきこもりやキレやすい人などでは、社会脳に不調があると思われるが、その脳内メカニズムは不明である。本研究は、(1)従来の近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) が抱える頭皮血流影響の問題を解決する高密度拡散光トモグラフィ(HD-DOT)システムの構築と, (2)HD-DOTと機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて対人関係から生じる感情の生成・制御の神経メカニズムを明らかにし、社会脳の機能不全に対する教育的・医療的介入進展のための脳科学的エビデンスの取得を目的とする。 H26年度は、既存の多チャンネルNIRS計測装置でHD-DOTを行うために、異なる照射―受光間距離に対応できるように受光部のダイナミックレンジを拡大する作業を行った(6 bitから24 bitへ拡大)。また、社会生活の中で生じるネガティブ感情誘発刺激を考案して(就職試験の場面を想定して将来の夢を作文し、それに対する否定的なコメントを連続的にあるいは肯定的コメントと組み合わせて呈示する)、不快感情が消褪していく過程の脳活動をfMRIで検討した。その結果、ネガティブ感情からの脱却には,前頭極, 右腹外側前頭前野, 左側頭・頭頂接合部からの扁桃体活動抑制が重要であることが明らかになった. また、腹外側前頭前野と縁上回はreappraisal(事象に対する解釈を変える)による感情制御に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、HD-DOTのための装置の改造と、アルゴリズムの構築、さらに生体計測によるシステムの検証をH26年度に行い、H27年度以降に、HD-DOT, fMRI計測を行う予定であった。しかし、装置改造中に装置そのものの不備(内臓トランスがノイズを発生)が見つかり、その対応のため装置の使用ができなくなり、今年度はダイナミックレンジの向上確認までで終わった。一方、次年度に行う予定であった実験デザインの作製とそれを用いたfMRI計測を先に行い、現在結果を論文にまとめている。従って、年度における計画が入れ替わっただけで、おおむね順調に進行したとみなせる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、次の手順でHD-DOTを完成させる:①Superficial regression methodを組み込んだDOTアルゴリズムのプログラミングを行う。感度行列Aについては、被験者ごとに頭部MRIを計測し、モンテカルロシミュレーションによってもとめる。②HD-DOTシステムの性能検証として、Eggebrechtらと同じ視覚刺激(チェッカーボード)を用いて視覚野の反応を計測し彼らの結果と比較する。次に、今年度と同じ実験デザインとHD-DOTを用いて計測を行い、fMRI計測結果の検証と、HD-DOTの感情研究における有用性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予定していた装置の改造が、途中で装置本体の不具合がみつかり(メーカーの責任のためこれに対する修理費用は発生せず)、受光部の感度を上げる作業で中断したため、それ以降の作業にかかる費用が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
残りの作業であるホルダーの作成費に充てる。さらに、データ解析用パソコンの購入が必要になったため、その費用に充てる。
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