研究課題/領域番号 |
26280050
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
星 詳子 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (50332383)
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研究分担者 |
精山 明敏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70206605)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感情 / NIRS / 皮膚血流 / 社会脳 / ヘモグロビン |
研究実績の概要 |
①皮膚血流のNIRS信号に対する影響 NIRS信号には、脳内ヘモグロビン(Hb)信号だけでなく、頭皮Hb信号も重畳されており、それを取り除くために様々なsuperficial regression法が提案されている。この方法では皮膚血流変化は頭皮・顔面皮膚で一様であるという前提が必要であるが、まだ実証はされていない。そこで、健常成人16名を対象に、言語流暢性課題遂行時の皮膚血流変化についてマルチチャンネル NIRS計測システムを用いて調べた。送受間隔5 ㎜と40 ㎜の光ファイバを前額部に装着することによって、前額部の頭皮Hb信号と通常のNIRS信号を計測した。すべての被検者に対して、NIRS信号は、いくつかのチャンネルの頭皮Hb信号と強く相関した。また、前額部の頭皮Hb信号の各チャンネル間の相関係数の空間分布パターンは、被検者によって、大きく異なっており、15 ㎜離れた位置でさえ、異なった時間波形を示した。よって、一般的に、言語流暢性課題における前額部の頭皮Hb変化において、少なくとも15 ㎜以上の範囲において、空間的均一性は仮定できないと考えられた。 ②他者からの否定的・肯定的評価による脳賦活部位の検討 他人からの評価はヒトの精神状態に大きな影響を与える。特に否定的評価は強い負の感情を引き起こすが、通常は非意識下に制御される。一方、メンタルヘルス不全では制御障害が認められることがある。その制御機構を明らかにするために、まず、就職活動を模擬して将来の夢などを15名の被検者に作文してもらい、それに対するコメントを正・負の感情誘発刺激とした。マルチチャンネルNIRS装置を用いて前頭部を計測して統計的仮説検定を行い、それぞれの感情に関連する脳領域を同定した。これらの結果から、肯定的評価で生じる正の感情に前頭極が、否定的評価で生じる負の感情に腹外側前頭前野が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIRS計測における皮膚血流問題を、光ファイバ高密度配列を用いるsuperficial regression法とCW-DOTによって解決する予定であったが、前者に必用な「空間的に一様な皮膚血流変化」という前提を否定する結果が得られたため断念した。一方、NIRS計測から計測部位を前頭前野に限局して計測することが可能であることが判明した。また、CW-DOTに加えてより精度の高いタイムドメインのDOTも開発しており、次年度はこのDOTを用いて感情制御機構解明を目指す。また、既に2年目以降に予定していたfMRI計測は完了しているため、おおむね順調に進行しているとみなした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのfMRI, NIRS計測と同じ実験デザインでDOT計測を行う。 タイムドメインDOT(TD-DOT)に関しては、装置の完成が6月末の予定のため、CW-DOTのアルゴリズムも並行して開発し、CW-DOTでもデータ取得を行う。計測に先立ち、まずTD-DOT,CW-DOT用のホルダーを作成する。個人特性と感情制御の関係については、fMRI計測で調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度ワークステーション(WS)を購入したが、WSの騒音防止のために遮音ボックスが必要である。しかし、WSのスペックに適した遮音ボックスの入手が年度内では困難であった。また、ホルダー作成には当初の試算より安価にできる方法を見出したが、これも材料の納期が間に合わず、次年度にしたため繰り越し金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ワークスステーション遮音ボックス、ファイバーホルダー材料、さらに数本の光ファイバーに経年劣化が認められるため、この交換費用に充てる。
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