研究課題/領域番号 |
26280058
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中澤 篤志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20362593)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 角膜イメージング / 視線検出 / 画像認識 / 画像マッチング |
研究実績の概要 |
本年度は以下の項目で研究開発を行った。 1.角膜表面反射画像を取得するリモートカメラシステムの設計と乳幼児の角膜表面反射計測に関する周辺視野計測 乳幼児向けリモートカメラシステムを2システム設計し、実験および論文投稿を行った。1システムは京都大学で行ったものであり、市販デジタルカメラと望遠レンズを組み合わせたものである。これにより乳幼児の角膜表面反射計測を2m程度の距離から行うことができる。また角膜境界の追跡には機械学習とMCMCによる追跡を組み合わせることで実現する。これにより、入力動画像から注視点を追跡することが可能となった。2つめのシステムについては、ジョージア工科大学と共同で行い、モータードライブによる動的焦点追跡が可能なシステムを設計、実験を行い、論文投稿を行った。 2.周辺視評価手法の確立 人の周辺視特性を、市販のアイトラッカを使って計測するプロトコルを作成した。人の注視点から一定角度離れた場所に刺激を提示し、人が認知できるかをテストしている。これにより、画面レンダリングの視野を動的に変化させて効率的な描画処理を行うことが可能になった。 3.モバイル角膜イメージングカメラの開発 従来のモバイル角膜イメージングカメラでは問題だった、フレームレート・解像度・焦点の自動調節問題を可能にするモバイルイメージングカメラを設計・開発した。これにより、屋外環境におけるモバイル状況で角膜表面反射を安定的に捉えることが可能になった。昨年度から今年度にかけてこのデバイスを多数試作しており、共同研究先とともに評価・応用技術の開発を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度初頭に設定した3点の研究課題はほぼ達成できており、技術的な点としてはほぼ当初通りに開発が進んでいる。また、角膜イメージングカメラについても、国内での発表および海外(ジョージア工科大学)との共同開発デバイスは完成し、乳幼児に対する実験環境でのテストおよび論文投稿を行った。一方で、その結果として、乳幼児に対する実験での、被験者の動きの大きさが予想以上のものであり、注視点検出が安定して行えないという問題がわかってきており、この点をどう解決するか、また平行して本技術をどのような点に適用していくかを共同研究者と議論している。1点としては、乳幼児の眼球画像解析と平行して、調査者のほうにも同カメラを取り付け、互いの画像からアイコンタクトなどを検出可能であるのではないかという議論を行っており、調査者の前方カメラ画像と角膜表面反射画像とのマッチングを利用して、視線行動解析を行うことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に書いたとおり、乳幼児の視線をリモートで検出するには技術的に困難な点もあり、データ数が十分確保できないことも考えられるため、調査者(乳幼児の診断者)の方にカメラを取り付け、乳幼児とのコミュニケーション解析をする方向での展開を考えている。このために、モバイル角膜イメージングカメラから得られた画像特徴から顔検出を行い(乳幼児の顔画像検出を行い)、その顔方向からアイコンタクトを捉える方法、その頻度とASDとの関連性を考える方法についての研究を行う。 周辺視角度推定については、評価の結果、従来の角膜を球体とみなしたモデルによる角度推定では、目の周辺方向で精度が大幅に落ちることが実験から明らかになったため、これを解決する楕円体モデルによる周辺視角度推定を実現する。 モバイル角膜イメージングカメラについては、本年度新設計を行い、高解像度化、高速化が実現されたため、共同研究先とともに新たな適用分野(マーケティング・ロボットコミュニケーションなど)への展開とする方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
出版予定していた論文誌2本が不再録になったため、掲載費の費用がかからなかった。また、海外の研究機関(ジョージア工科大学)への共同研究の出張予定があったが、先方の教授と日本の国際会議の折に研究打ち合わせが可能だったため、旅費の支出を抑えることができた。角膜イメージングカメラについては、本年度作成できる台数が、ベンダーの都合により予定より少なかった(10台-->4台)ため、都合上残りは来年度の発注とする。
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次年度使用額の使用計画 |
角膜イメージングカメラの残り6台を追加発注する(15×6=約90万円)。論文については査読意見を参考の上、再実験・書き直しの上、本年度の掲載を目標として投稿を行っている(現在投稿中2本、執筆中1本)
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