研究課題
本研究の目的は,人体内部を安全に可視化するための新しいトモグラフィ手法の基礎となる理論を開発することである.本研究では,人体内部で赤外線が散乱する様子をコンピュータグラフィクスで用いられている手法を用いて解析し,コンピュータビジョンのアプローチにより逆問題を解いて物体内部の様子を推定する手法を開発する.本年度の成果は以下の2つである.1つ目は,減衰項を記述する非線形の指数関数を線形近似し,問題を定式化しなおしたことである.本研究において逆問題を解く部分に計算量が多くなる理由の1つが関数の非線形性である.これを区分線形近似し,非線形性を排除した形に新しく定式化しなおした.その結果,重み付き最小二乗法の反復更新という新しいアルゴリズムを得ることができた.しかしまだ問題が残っており,反復の収束性があきらかではないことと,非線形最適化の反復更新と比較してどの程度の計算量が削減できたのかという定量評価がないことが大きな課題である.これは今後の研究において明らかにする予定である.2つ目は,ヘッセ行列の高速計算式を考案したことである.これまでの定式化と実装では,ヘッセ行列の各要素を個別に計算していたため,変数の数が多くなると計算量が膨大になり,大型計算機を用いても計算が困難であった.そこでヘッセ行列の計算式を新しく導出し,行列計算の形で定式化しなおした.この結果,大幅に計算量を減らすことに成功し,これまで計算量が高いために適用を諦めていたニュートン法を用いて高速に計算を行うことが可能になった.そしてヘッセ行列の禁じ更新を用いる準ニュートン法と,本研究で導出したヘッセ行列を用いたニュートン法を比較し,本研究においてはニュートン法が計算量において優るという結果が得られた.
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り,計算量を低減するアルゴリズムを開発し,効率的な計算が可能になった.昨年度にはすでに3次元への拡張を行っていたが非効率であったため,今年度の成果により対象が3次元であっても効率的に計算することができる様になった.
立案当初は実物体での計測まで達成目標の視野に入れていたが,いまだシミュレーションのモデルと実物体の観測とには大きな乖離が存在し,現在のシミュレーションモデルをそのまま適用することが困難であることが判明してきた.そのため,今後はモデルの精度を高め,より現実の観測に近いシミュレーション実験を実行する.それによって良好な結果が得られれば,実物体計測も行う.
次年度使用額は総額の約1%程度であり,ほぼ適切に経費は執行されている.
次年度の経費と合算して適切に執行する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件)
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