研究課題/領域番号 |
26280061
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
玉木 徹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10333494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トモグラフィ / コンピュータビジョン / 多重散乱 / 吸収係数 / 内点法 / 制約付き最適化問題 / ヘッセ行列 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,人体内部を安全に可視化するための新しいトモグラフィ手法の基礎となる理論を開発することである.本研究では,人体内部で赤外線が散乱する様子をコンピュータグラフィクスで用いられている手法を用いて解析し,コンピュータビジョンのアプローチにより逆問題を解いて物体内部の様子を推定する手法を開発することである.本年度の成果は,主双対内点法による効率的な推定方法の実装と,導出された効率的なヘッセ行列を実装し,大幅な計算量低下を実現したことである.これまで本研究においては多重散乱トモグラフィを制約付き最適化問題として定式化し,それを内点法の一つである対数障壁法を用いて解いていた.しかし一般に対数障壁法よりも主双対内点法のほうが収束性に優れていると言われている.そのため,本研究では主双対内点法を実装し,本研究における制約付き最適化問題を解くことにより,計算の高速化を実現した.しかし内部反復においてニュートン法を用いており,そのためのヘッセ行列の計算コストが高いという問題があった.そのため,ニュートン法を用いた主双対内点法では準ニュートン法を用いた対数障壁法よりもまだ計算コストが高いことが判明した.そのため,前年度までの研究成果である効率的なヘッセ行列計算方法を実装し,主双対内点法と組み合わせることで,高速化を実現し,その結果を国際会議で発表した.その後,実装コードを最適化し,従来の準ニュートン法と対数障壁法では500秒かかっていた計算を,ニュートン法と主双対内点法によって20秒程度にまで高速化することが実現できた.この結果は現在国際論文誌に投稿中である.本年度はさらに実物体を用いた計測に着手し,3Dプリンタを用いて様々な形状の物体を作成し,シミュレーションにおける2次元媒体モデルを3次元実物体に対してどのように適用するのかを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主双対内点法と効率的なヘッセ行列計算によるニュートン法を用いることで計算量の低減を実現することができたが,まだ計算量が大きく実行時間がかかる問題があり,このままでは大きい格子モデルのい適用することはまだ困難である.また申請段階に想定していたような実物体への適用はかなり困難であることが判明してきた.本年度に実物体の計測に着手した結果,得られるデータのノイズが大きく,まだモデルと実物体での乖離が大きいため,シミュレーションをそのまま実物体に適用することができていない..
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は,計算速度の向上と計算量の低減に特化する.非格子モデルや大きい格子モデルへの適用,光の経路数の増大に対応するため,理論的な計算量の低減と,効率的な実装による計算速度の向上に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初予定していた実物体計測のための3Dプリンタが技術向上により廉価になり,予定していた金額を下回る製品が購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に必要となる計算の高速化のための計算サーバ購入費用に充当する予定である.
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