研究課題/領域番号 |
26280065
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西浦 敬信 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70343275)
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研究分担者 |
善本 哲夫 立命館大学, 経営学部, 教授 (40396825)
中山 雅人 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (90511056)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音響信号処理 / パラメトリックスピーカ / 音像定位 / オーディオスポット |
研究実績の概要 |
空間上の3D音像構築という課題に対して,キャリア波と側帯波を複数のスピーカにより分離して放射することで,任意の音空間上に3D音像ホログラムを構築する.ハードウェアおよびソフトウェアによる技術研究だけでなく,3D音像の活用シーンの調査・検討等の社会実装研究も実施することで次世代3D音響再生方式の総合開発を展開する.具体的には1.【技術研究(ハードウェア)】 指向性を自由に制御可能な新しいスピーカシステムの開発,2.【技術研究(ソフトウェア)】 キャリア波と側帯波の分離放射による3D音像ホログラムの構築,3.【社会実装研究】 3D音像ホログラムの社会における活用シーンの調査・検討,4.【総合研究】 上記1-3を統合した社会基盤の総合開発,の4項目を柱として研究を推進する. 平成26年度は,項目1.に対してパラメトリックスピーカ素子の開発を行った.具体的には平面型構造による狭指向性と凹面型構造による広指向性を目指して,パラメトリックスピーカの放射面の形状と放射特性の関係を研究した.その結果,放射面の形状により,指向特性を制御できることが明らかとなった.項目2.では,キャリア波と側帯波の分離放射方式の開発を試みた.具体的には,振幅変調波を基にキャリア波と側帯波を分離して別々のパラメトリックスピーカから放射することで,空間一点での音像構築を試みた.その結果,狙った焦点に音像を構築できることが明らかとなった.最後に項目3.ではパラメトリックスピーカを用いたフィールドワークを行った.特に社会における超指向性スピーカの活用場所を調査・検討を念頭に,市街地中心部の公園におけるラジオ体操用スピーカとしての検討を行った.その結果,ユーザにはラジオ体操の音源がはっきりと聞こえるが,周囲の住民には全く聞こえない環境を構築することに成功し,新たな活用シーンの創出を示唆できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある特定の領域にのみ音波を放射できるパラメトリックスピーカを改良し,音空間の任意の場所における立体的な音像(3D音像ホログラム)を実現する.特に放射面を凸面から凹面まで自由に形状変形可能なフレキシブルパラメトリックスピーカを開発した上で,複数のフレキシブルパラメトリックスピーカを用いて「キャリア波」と「側帯波」を分離放射することで音空間に3D音像ホログラムを構築する計画である.この研究の目的に対し平成26年度はハードウェア研究としてはパラメトリックスピーカの素子開発を行い,ソフトウェア研究としてはキャリア波と側帯波の分離放射方式の開発を行った.加えて社会実装研究としては京都市街地における公園でのラジオ体操や,丹波篠山地域の公民館におけるエクササイズやエアロビクスなど様々なシーンでの活用を念頭に展開した. 研究進捗としては当初計画通りに研究が進んでおり,3グループとも順調に進展していると言える.特にソフトウェア研究では,多数のメディア取材を受け,研究成果を積極的に発信した実績を有する.平成27年度はハードウェア研究に大きな進展が期待でき,最終目標を見据えて計画的に研究を推進する計画である.
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今後の研究の推進方策 |
ハードウェア研究では,フレキシブルパラメトリックスピーカの開発に着手する.このスピーカはこれまで不可能とされていた指向特性を自由に制御可能な機構を有しており,社会的インパクトの大きな研究として期待している.加えてソフトウェア研究では,マルチキャリア波およびマルチ側帯波を使って3D音像ホログラムの基礎的検討を行う計画である.最後に社会実装研究では,これまで使用していたパラメトリックスピーカを用いた直線型のオーディオスポットではなく,分離放射方式に基づく一点再生型のオーディオスポットを用いたフィールドワークを展開する計画である.これらの技術を発展的に拡張・融合し,さらに社会における活用シーンも調査・検討(社会実装)することで,音空間上の任意の場所に構築可能な3D音像ホログラムの総合開発を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果に関する学術雑誌論文の掲載が2015年4月以降となったため,少額の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画通り,学術雑誌論文掲載料として執行する方針である.
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