研究課題/領域番号 |
26280069
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 晃生 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313035)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / ハプティクス / アクチュエータ |
研究実績の概要 |
本研究では,テーブルトップディスプレイ上において新しいインタラクションを実現することをめざし,主に静電気力を活用したインタラクション技術の研究を行った.提案技術はディスプレイ上に透明電極を配置することで,その上に置かれた物体に静電気力を作用させ,映像と同期した物体動作や力覚フィードバックを実現するものである.これまで主として静電気力の利用を中心に検討してきたが,振動の併用による性能向上の可能性を見いだしたことから,今年度は振動併用システムの研究に注力した. 従来提案してきた画面上物体駆動技術では静電リニアモータの原理による駆動を行っていたが,これにディスプレイ面の振動を加えることで動作の安定化をはかった.具体的には,ディスプレイ表面に超音波たわみ振動を与えることでディスプレイ上にスクイーズ膜を生成して摩擦を低減することを検討した.従来の静電リニアモータ原理では表面摩擦が動作安定性を損ねており,摩擦低減のためにガラスビーズをディスプレイ表面に散布していたが,スクイーズ膜の利用によりガラスビーズ無しに駆動が行なえることを明らかとした.一方,振動を利用した新しい物体駆動方式として,ディスプレイ表面を面内振動させ,それに同期して静電吸着力を発生して複数物体を駆動する方式を実現した.この駆動技術は,従来提案してきた静電吸着によるマルチタッチ力覚提示技術と類似点が多く,従来別個の技術であった力覚提示と物体搬送の統合を容易にするものと期待している.このほか,画面上物体の位置と力の計測技術の性能検証,画面上でより多様な力覚提示(具体的には硬軟感の提示)を行うための基盤技術の提案を行った.さらに,従来,物体搬送に活用してきた静電リニアモータ技術に関して,静電誘導を利用したより簡易な駆動方式を新たに提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱として,マルチタッチ力覚提示(Multi-touch Surface haptics)技術と画面上物体動作(Active Tangible Interface)技術の二つを掲げてきたが,一方は,画面表面の摩擦を必要とするのに対し,他方は摩擦の低減が主要な課題となっていた.本年度,振動を活用する方式を提案したことで,この課題に対するブレイクスルーが得られたと考えている.具体的には2種の振動利用法を提案したが,超音波たわみ振動を用いる方式では,振動のオン・オフにより摩擦力を変化させられることから,摩擦の必要な力覚提示と摩擦の不要な物体搬送とを両立できる可能性が得られた.もう一方の面内振動を利用した新しい物体動作技術では摩擦を積極的に活用しており,マルチタッチ力覚提示技術との類似性が高いことから,両者の統合がより容易になると期待できる. また,従来検討を進めてきた技術自体について,本年度の計画事項であった画面上物体の位置と力の検出,硬軟感を含めたより多様な力覚提示において進捗が得られている.さらには,従来物体搬送に利用してきた静電リニアモータ原理に関して新しい構成を提案することで,より簡易なシステムで駆動を実現できる可能性を見いだしている. 以上をふまえて,全体として研究が順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまで基盤技術の高度化を進めてきた中で,振動を利用した新駆動方式や,新しいリニアモータ原理などを見いだしてきたが,これらの技術について,その特性や性能限界について,より深い検討を進めていくことが必要である.また,従来から検討してきた技術に,これらの新技術も加わったことで,テーブルトップディスプレイ上で物体搬送と力覚提示を統合するための基盤が整いつつある.具体的な両者の統合手法について,簡易デモシステムの試作等を行い,基本性能や適用限界について検討を行っていく必要があると考えている.
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