本研究ではテーブルトップディスプレイ上での新しいインタラクション実現をめざし,静電気力を活用したインタラクション技術の研究を行った. 従来研究で,静電アクチュエータによる画面上物体駆動(Active Tangible Interface)や,静電吸着による受動力覚提示(Multi-Touch Surface Haptics)を実現しているが,これらは低推力での駆動もしくは受動力覚提示のいずれかしか行えないという課題があり,昨年度,振動の活用による課題の解消を提案した. 提案した振動活用法は大きく二つあり,一つはガラス面にたわみ振動を起こしスクイーズ膜効果で表面摩擦を制御するものである.これにより,本質的に低摩擦を要求する静電アクチュエータと高摩擦を要求する静電吸着の統合が可能になると期待できる.本年度は,静電吸着を実装したガラス面上にスクイーズ膜を発生することで,スクイーズ膜効果と静電吸着を併用して力覚提示を行う可能性について検討し,広いダイナミックレンジで力覚提示ができる可能性を明らかとした. もう一方の振動活用法は,ガラス面を面内方向に加振し,これと同期して静電吸着を制御することで摩擦を介して物体を駆動する,というものである.基本原理検証のため小型の1自由度プロトタイプを用いて研究を進めたが,昨年度試作では,振動源にボイスコイルモータを用いており振動周波数が低かった.そのため,低い位置決め性能や可聴音発生という課題があった.本年度は振動の高周波数化をめざし圧電素子を用いたプロトタイプを試作し,高周波数化における本システムの課題を検討した. また,静電アクチュエータの新たな駆動方法として昨年度提案した2相移動子電極を用いた静電誘導モータについて検討を進め,アクチュエータ動作時の移動子の挙動を明らかとし,性能低下につながる挙動を改善したプロトタイプを実現した.
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