研究課題/領域番号 |
26280070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊福部 達 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 名誉教授 (70002102)
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研究分担者 |
上田 一貴 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10403594)
坂尻 正次 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70412963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 福祉工学 / ヒューマンインタフェース・インタラクション / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、視覚・聴覚・発話などの機能が低下したり失ったりした障害者・高齢者(以下、当事者)のために、「聞く」「話す」「見る」を助ける触覚ディスプレイを開発することである。特に、当事者の手指に伝達するウェアラブルな携帯電話インタフェースを開発するところに重点を置く。また、その技術的な成果をバーチャルリアリティやロボットに生かしながら、一方では、触覚を介した情報が脳内でどのように処理されるかという認知科学への命題を提供するとことにある。昨年度は、視覚支援、聴覚支援、発声支援で求められる触覚デバイスの最適なパラメータ設定を行った。また、研究代表者らが開発してきた触覚以外の経路を利用する各種支援方式と併用した場合に本触覚デバイスをどこまで生かせるかを追求し、触覚デバイスの有用性と限界を考察した。さらに、代表者は、国内外の出版社からの依頼を受けて、本研究成果を広く国内外に知ってもらうために2冊の専門書を著した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、「聞く」「話す」「見る」を支援する触覚デバイスの最適なパラメータ設定を行い、実現可能性の高いものから実用化への道筋をつけた。本デバイスを手に持って動かしながら周囲の音響情報を探索・取得させる「ハプティック」機能を実現するのに有効な各種パラメータを検討した。具体的には、①本デバイスの動きと環境映像の取得・処理およびその触覚提示という一連の流れを実現する上で有効な各種パラメータを調べた。特に、ハプティック画像デバイスに適したカメラ画像の解像度や焦点の自動調節法などを検討した。 ②本デバイスの触覚センサで取得した情報を、ブルーツースやネットワークを通じて受け手の指先で認識できるようにする盲ろう者用触覚インタフェースを実現する上で有効な各種パラメータを調べた。 ③また、触覚以外の経路を利用する支援方式として我々が長年にわたり開発してきた発声支援のための「ハンズフリー人工喉頭」やスマートホンによる「指で話そう」および視覚支援のための「コウモリを模擬したFM超音波による環境認識装置」を実用化・普及化に向けて改良化した。本年度はこれらの発声支援方式や環境認識支援方式と併用した場合に本触覚デバイスをどこまで生かせるかを追求し、触覚デバイスの有用性と限界を考察した。 ④代表者は、昨年度、試作した本触覚デバイスを広く利用してもらうことを目的として、触覚デバイスの原理や特性と用途について述べた2冊の単著(電子情報学会編教科書「福祉工学の基礎」(コロナ社、223頁、平成29年5月)および“Sound-based Assistive Technology” (Springer、239頁、2017年3月)を著した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実用化に向けてスマートホンに搭載するためのインタフェースの簡略化および触覚デバイスの小型化・省電力化を進める。また、当事者の触覚特性に短期間でフィットできるように当事者自身が各種パラメータの設定が容易にできるように改良する。特に、本触覚デバイスを手でもって自由に動かしながら情報を取得する「ハプティック機能」により音情報や環境情報を獲得しやすいようにデバイスの形状や使い勝手を良くするためのデザイン改良化を行う。 一方では、昨年度に上梓した2冊の著書を通じて国内外からどのような反響があり、どのような要望が出てくるかを分析しながら、マーケットの絞り込みを行うとともに、バーチャルリアリティや対話ロボットに本触覚デバイスをどのように生かせるかを検討していく。また、最終年度に向けて、本触覚デバイスが広く利用されるように用途拡大や低価格化を進め、本課題に適したビジネスモデルを探る。同時に、他の支援方式と組み合わせることにより、マルチモーダル刺激をヒトの感覚や脳がどこまで有効に利用できるのかという認知科学研究への命題を提示していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗状況により、研究員の人件費が、当初予定より、1か月分が、多く生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月~7月(4ヶ月分)人件費へ繰り入れる。
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