現在の3D表示方式の主流である2眼式は、立体視用メガネの装着が必要である、頭を動かしても見え方が変化しない不自然な見え方をする、眼精疲労を生じるなど、視聴者の負荷や不自然さの面で問題を抱えている。一方「3次元的な光学像を形成する」という考え方に基づく空間像方式は、これらの問題を解決でき、今後の主流になると期待される。「空間像方式」とは像形成の考え方に基づく立体表示技術の総称であり、具体的には光の干渉・回折を利用した電子ホログラフィや、インテグラル式をはじめとする光線再生方式などがある。しかし、これらの方式は現在の技術水準を大幅に上回る膨大な画素数の表示デバイスを必要とするため、現状の空間像方式は解像度や視域の広さなどに大きな問題がある。特に、現状の大半のディスプレイは水平方向の視差のみであって上下方向の視差が再現されておらず、原理的な長所が十分に活かされていると言えない。この理由は、現状利用可能な表示デバイスを用いて表示画像の解像度を確保するためには上下方向の視差を諦めざるを得ないためである。しかし、従来の裸眼3D方式では射出される光線の大部分は観察者の目に入らず無駄であるという事実に着目すれば、光線の利用効率を高めることで上下視差の実現が可能と考えられる。本研究では観察者の瞳孔付近にのみ光線を射出するオンデマンド光線再生技術を確立し、「見える」光線に表示デバイスのリソースを割り当てることによって上下方向の視差を実現することを目的とする。28年度は光線提示系の検討を行い、観察者の瞳孔付近にのみ光線を射出する光学系の試作し、原理の検証を行った。
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