研究課題/領域番号 |
26280075
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川嶋 宏彰 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40346101)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 視線 / 注視行動 / 興味 / 心的状態推定 / 意思決定支援 |
研究実績の概要 |
人同士の対話では,「情報を共有したい」「意思決定をしたい」「会話を継続したい」といった対話目的を互いに共有し,その対話目的を実現しようとする意図に基づいて,各対話参加者が発話内容および発話タイミングを調整している.そこで本研究では,発話の背後にある対話目的および話者の内的過程までをさかのぼってモデル化することで,人の柔軟なターンテイキングのタイミング生成機構をシステムにより実現することを目的とする.本研究では,ユーザの意思決定支援システム,および人同士の合意形成対話の状況推定手法を開発すること目指しており,本年度は,特に意思決定時におけるユーザの心的状態遷移過程を推定する手法に関して以下の研究を行った. (1) 確率モデルを用いたユーザの心的状態遷移の推定 モニタに複数の選択肢を提示し,ユーザにそのうち一つを選択してもらう意思決定過程において,視線パターンをアイトラッカーにて計測する.このとき,視線データから得られる注視対象の遷移パターンは,ユーザの興味だけでなく,コンテンツの空間的配置や誘目性などの外的要因にも影響を受ける.そこで,ユーザの意思決定過程における注視行動を,内的興味がコンテンツ情報(外的要因)によって修飾されるとして確率的にモデル化し,内的要因である興味,および外的要因の影響変化をそれぞれ推定する手法を考案した. (2) デザイン構造を利用した選択行動フェーズの認識 ユーザがコンテンツを閲覧し選択行動を行う過程は,まずどのような選択候補があるのかを「情報取得」するフェーズ,選択候補の対象について「比較・吟味」するフェーズ,さらに「対象決定後」の閲覧などいくつかのフェーズに分けられる.そこで,コンテンツの配置デザインの構造がどれだけ利用されて見比べが行われたかを特徴量化することで,これら選択行動のフェーズを認識する手法を提案するとともに,その有効性を確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発する対話システムでは,ユーザの選択行動における意思決定を,適切な間合いでの発話や応答により支援することを目指しており,ユーザの心的・内的状態の遷移過程を視線や発話情報を用いて推定するパートと,推定された心的状態に基づいて発話タイミング生成を行うパートに分けられる.後者のタイミング生成機構については,本年度は数理モデルの基礎的検討にとどまっているものの,一方で前者の心的状態推定については,当初の計画以上の知見が得られた.したがって,研究の目的を達成する上で全体としてはおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,ユーザの心的状態が推定されたとして,そこから適切な発話内容および発話タイミングを決定するための数理モデルを確立するとともに,その有効性評価を進める.特に次年度は,人同士の対話を語用論的観点から分析することで,発話の背後にある対話目的の定式化を試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,当初予定していた国際会議発表を日程の都合上見送ったためである.
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度の国際会議において,今年度の成果について合わせて発表を行う計画であり,その旅費および参加費として使用することを予定している.
|