研究課題/領域番号 |
26280088
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 比呂志 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50315123)
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研究分担者 |
山際 伸一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10574725)
榎田 修一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40346862)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知識発見 / データマイニング / ストリーム圧縮 / 文字列アルゴリズム |
研究実績の概要 |
データ圧縮によって知的情報処理が新展開を迎えている。ネットワーク上のストリームデータは増加する一方であるが、ハードウェアの性能向上は限界に近づいている。本研究は新しい可逆圧縮の理論を武器にこの問題に取り組み、圧縮情報処理による大量データからのリアルタイム知識発見を実現する。具体的には、極めて小さい遅延時間で圧縮、伝送、復号が可能なストリーム圧縮アルゴリズムを開発し、ハードウェア上に実装することで、ネットワークの物理的限界を超えたスループットを達成する。そしてこのアルゴリズムを高密度画像圧縮へ拡張し、文字列と動画像ストリームからの高精度イベント抽出の実現によって圧縮情報処理技術の普及と標準化を目指す。以上が本研究の期間全体で達成する目標であるが、今年度は、このうちストリーム圧縮アルゴリズムの実装と動画像の収集を行った。特に、ストリーム圧縮アルゴリズムについては、3つの大目標のうち(1)ストリーム圧縮理論の構築と(2)ストリーム圧縮器の実装を行った。これらの大目標を達成するために、研究計画ではA,B,Cの3つの課題を設定したが、今年度は、そのうちのA:最適符号のためのアルゴリズム設計、B:変換テーブルの自動更新の核問題に対して、成果を得て、外部発表および特許出願を果たした。今後は、これらの技術をさらに洗練させ、最終目標である動画像処理への応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の欄で述べた問題に対して次のような成果を得た。 最適符号のためのアルゴリズム設計:構文木によって文字列を表現し、同じ部分木の繰り返しを除去する圧縮法を文法圧縮と呼ぶ。この構文木は文字を固定長で表現するため、符号の最適化ためにはさらに文字を可変長符号化しなければならない。FPGA の試作機ではこの可変長符号化は未達成であり、これを可能にすることで情報理論的に最適な圧縮を達成できる。今年度は、この動的符号化のためのアイディアを獲得し、実装可能性を検証中である。 変換テーブルの動的更新:高頻度のパターンを優先的に処理することで圧縮率が高まることが知られている。高頻度パターンは変換テーブルによって記憶するが、頻度は入力に応じて変化する。本研究では,ストリーム上で変換テーブルを動的に更新する(試作機では静的テーブル)。この機能の実現よって変換テーブル自身は伝送不要となり、高速伝送に大きく貢献する。今年度はこの問題に対して、FPAG内で利用する変換テーブルを動的に更新可能にし、その効果を実装によって確かめた。 以上の成果を得たことで、次年度からの計画は予定通り進行すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最適符号のためのアルゴリズム設計:これまでに得られた最適符号化の理論がFPGA上で実装可能であるかを検証する。そのアルゴリズムがそのまま実装することが困難な場合には、アルゴリズムの機能をある程度制限することで、実用的な回路規模の実装を実現する。 変換テーブルの動的更新:この技術は特許出願済みである。今後は、技術見本市等でデモンストレーションを行い、社会への展開を目指す。 実世界への応用:これまでに共同研究者とともに、利用可能な動画データの収集と分析を行っている。特に、タクシー事業者が所有するドライブレコーダのデータから目視によってニアミスと考えられるデータを抽出した。このデータによって危険判定を行うための特徴量算出を行い、ストリームアルゴリズムと合わせて社会応用につなげる予定である。
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