研究課題/領域番号 |
26280092
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
井上 克巳 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (10252321)
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研究分担者 |
沖本 天太 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (10632432)
Nicolas Schwind 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域人工知能研究センター, 研究員 (60646397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 推論 / レジリエンス / 制約最適化 / 多目的最適化 / ロバスト性 / 安定性 / 平等性 |
研究実績の概要 |
本研究では、外乱に対して耐性があり、機能が持続的であるような、レジリエントなシステムを定式化し、そのうえでの推論問題を考え、システム設計に役立てることを目指している。当初の研究計画に従い、 A. レジリエントなシステムのモデル化、B. システムのレジリエンス性に関する推論、C. レジリエントなシステムの設計と応用、の3つの研究サブテーマについて研究を進めた。 (A) レジリエンスを議論するための制約モデルとして提案した SRモデルを拡張・改良し、動的システム・擾乱を抽象的にモデル化し、ジャーナル論文として発表した。また、擾乱が起きた後に、できるだけ前の解との距離が近い解を求めるための手法を考えた。 (B) レジリエントなシステムを動的な多目的制約最適化問題のフレームワークを用いて定式化し、すべてのパレート最適解を列挙するだけでなく、パレート解の中からいくつかの代表的解を求める手法や近似解法のためのアルゴリズムも開発した。 (C) レジリエントなシステムの応用例として、チーム編成におけるロバスト性に着目した研究を昨年度に引き続き行った。また、多目的ナース・リスケジューリング問題の研究を行った。医療現場では、勤務シフト作成後に不測の事態により勤務シフトを急遽修正せざるを得ない事態が頻繁に起こっている。修正後の勤務シフトに対する「最適性」及び「安定性」を同時に考慮した多目的ナース・リスケジューリング問題を定式化し、新しい解の評価基準として勤務割当変更に対する看護師間の「平等性」を評価した。他に、概日リズムなど生体システムにおけるレジリエンスや、ソーシャルネットワークにおける信念翻意のロバスト性についての研究を引き続き行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A. レジリエントなシステムのモデル化、B. システムのレジリエンス性に関する推論、C. レジリエントなシステムの設計と応用、の3つの研究サブテーマについてそれぞれ順調に進展しており、全体的にも計画通り進行している。具体的には、レジリエントなシステムを動的環境下における制約系として定義し、レジリエンス性能に関係するいくつかの指標を与えるモデル化のところは完成し、これらの指標を決定する計算問題を定義しアルゴリズム開発も進んでいる。そのうえで、チーム編成問題などの応用問題に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
以下のサブテーマをそれぞれ発展させながら,テーマの結合について考察し,新たな知見を獲得するとともに、レジリエントなシステム設計の方法論の整備を行う予定である。
(A) より現実的なダイナミクスを考慮するために、外部からの擾乱としてエージェントのアクションや外的事象も取り入れ、自然遷移や想定外事象に基づいたダイナミクスが混在したモデルを考える。 (B) 動的システムの定常・平衡状態を表わすアトラクターとも関連させた、ロバストなシステムの設計について考える。 (C) レジリエント・システムの応用として、動的環境におけるスケジューリング問題、ロボットレスキュー問題におけるロバストなチーム形成、ソーシャルネットワークにおける合意形成等について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年11月13日、フランス・パリで起きた同時多発テロを受け、安全面を考慮し11月30日~12月6日に予定していたパリでの研究打合せを延期することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
延期していたフランス出張旅費にあてる予定。
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