研究課題/領域番号 |
26280093
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
津田 一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10207384)
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研究分担者 |
合原 一幸 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40167218)
奈良 重俊 岡山大学, 自然科学研究科, 名誉教授 (60231495)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経回路網モデル / レビー小体型認知症 / カオス的遍歴 |
研究実績の概要 |
本研究は、脳内システム間の相互作用の観点 (hodological な見方) からレビー小体型認知症(DLB)に特異な複合型視覚性幻覚の中核機序を明らかにすることを目的にしている。特に、視覚情報を担う視覚野、視覚像のインデックス情報と文脈情報を担う前頭前野、視覚像とインデックス情報、文脈情報を結びつける側頭葉の間の長距離神経経路にこの視覚性幻覚の原因があるという仮説に焦点を当てる。これらを明らかにするために、今年度は次の課題を研究した。 1.DLBに特異な複合型視覚性幻覚に関する神経生理学的データ、臨床データをサーチして、包括的な仮説である理論モデルを構築した。特にアセチルコリンと視覚性幻覚の頻度に関する相関があること、ニコチン様ACh受容体のα7亜型α7-nAChRの減少については側頭皮質、前頭前野で認められること、前頭前野、側頭皮質に於ける錐体細胞やシナプス前軸索の減少などの皮質変性が認められることを考慮して、注意機構とアセチルコリン放出量の関係を与える実験データと複合型視覚性幻覚が注意を向けた網膜中心窩でのみ視認されているという報告を理論モデルに取り込んだ。 2.試験的な数理モデルを構築した。このとき、前頭前野の神経回路は文脈に依存するインデックス情報を生成すると仮定した。また、側頭葉の神経回路モデルとして、相互想起型連想記憶回路を参考にして前頭前野からのインデックス情報と視覚野からの画像情報の二入力系とし、抑制性ニューロン付のリカレントネットモデルを構築した。その結果、間違ったインデックス情報によって視野の一部に異なる画像情報が割り当てられることを示唆するダイナミクスを観察した。このダイナミクスはカオス的遍歴によって説明できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した課題Iと課題IIについては数理モデルの構築を行い、考慮に値するシミュレーション結果が得られたが、課題IIIについては、AChの生体内での役割があまりにも複雑であることが分かり、モデルに導入すべき良いパラメーターが見つからなかった。さらには、数理モデルも、インデックス情報の生成モデル、側頭葉のモデル構成などまだ改善の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究はほぼ計画通り進行しているので、基本的には予定通り進める。数理モデルの整合性、AChの機能に関しては、Collertonグループともさらに議論を重ねる予定である。また、DLBに特異な視覚性幻覚の客観的な指標も考察の対象である。これらに関する討議を国内で年2回ほどは開催し、Collertonグループとの議論の焦点を絞り込み、共同研究に発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入予定だった消耗品を購入しなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の予算とあわせ、計算機周辺機器(消耗品)の購入に使用する
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