研究課題/領域番号 |
26280094
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊庭 斉志 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (40302773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 進化計算 / 遺伝的アルゴリズム / 遺伝的プログラミング / 遺伝子ネットワーク |
研究実績の概要 |
今年度には主に,提案した手法を用いてさまざまな実領域への応用可能性を確認した.そこでの実証的実験をもとにして,発生型遺伝的プログラミングの有効性を確認した.具体的には,前年度に行ったロボティックスへの応用の研究を引き続き行うとともに,ウェブ情報検索や金融工学の問題,およびその他のデザイン問題(自動音楽作曲や音符への表情付けなど)や工学的順最適化問題に適用した.とくに,(1)学習後の遺伝的プログラムの再利用、(2)遺伝的プログラムからの知識抽出、(3)確率モデルを用いたプログラムの依存関係推定、について実証的に検証し,提案手法の頑強性,汎用性,効率性について評価した. 具体的には、Webインテリジェンスの代表であるWWW情報検索の課題に対して検証を行った.進化発生アプローチに基づく進化計算を用いた検索エンジンを構築し,ランキング関数の評価に用いられているLETOR (Learning To Rank)データセットなどを用いたベンチマーク比較を行った.その結果、ウェッブ上の情報構造をより的確に抽出できるような動的適応システムの実現に成功し、汎化能力,リアルタイム性,頑強性などにおいて従来の手法よりも優れていることが確認できた。 また前年度に続いて、ヒューマノイド・ロボットに対する動作設計や協調行動計画に応用し,提案手法の有効性を検証した.例えば、ヒューマノイドロボットによるブランコ漕ぎや投擲動作、ボールの蹴り動作などの基本的な動作設計において、より頑強で汎用性のある手法を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した手法を用いてさまざまな実領域への応用可能性を確認中である.そこでの実証的実験をもとにして,発生型遺伝的プログラミングの有効性を確認できている。具体的には、ヒューマノイドの動作生成、協調行動学習などにおいて、有用性が十分に検証できた。また金融工学やWWW検索への応用についても有用な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画で得られた実験結果を通して,発生型遺伝的プログラミングの有効性を検証し、プログラム進化に基づくより柔軟で頑強な動的適応システムの実現を試みた.今後はより実領域での有用性の検証を試みたい。 さらに、本研究で構築した動的適応システムを可搬性のあるように改良し,確率モデルに基づく遺伝的プログラミングを公開する予定である。具体的には、本研究で構築したGPシステム,とくに実領域での応用のために有用なアルゴリズムを,PDS ソフトとして研究代表者のホームページにおいて公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で重要な役割となる因果推定メカニズムの構築中に、安定性解析に基づく新たな統計的手法が見出されたことから、より詳細な調査を実施する必要が生じた。具体的には、自然言語処理において利用されている隠れアノテーション確率文脈自由文法を利用すると成果を飛躍的に高める可能性が判明した。この手法に関する有効性・計算論的な分析・実現法の検討が必要となり、延長を申請した。
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次年度使用額の使用計画 |
予算は主に最終的な研究成果作成のためのアルゴリズム・ソフトウェア開発に使用する。具体的には、構築した進化システムをPDSソフトとして公開する予定であり,多種類の計算機・OS 上で開発して動作の整合性をとるための計算資源・人的資源に使用する。 また、旅費のうち,最終的な研究成果の発表のためであり、国内旅費は人工知能学会全国大会,進化計算学会研究会など,外国旅費はGECCOやCECなどの国際会議に参加して発表するためのものである.
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