研究課題/領域番号 |
26280097
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (20511249)
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研究分担者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681)
原 雄介 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (90452135)
森田 雅宗 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), JSPS特別研究員 (90708504)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子ロボット / マイクロマシン / 非平衡 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
研究代表者の瀧ノ上は,触媒反応による気泡で自己推進する細胞サイズの複雑形状ゲル粒子の構築と制御を行った.具体的には,遠心力を利用した液滴射出マイクロ流体システムにより,直径約100 μmの複雑形状(プロペラ型等)の粒子を生成し,形状の非対称性による推進の制御を行い,並進運動,回転運動,およびその複合である円運動を実現することができた.また,同マイクロ流体システムを発展させ,鞭毛様の多重らせん構造のマイクロファイバーを生成する技術の開発にも成功した.分担者の森田は,上記マイクロ流体システムを応用し,脂質二重膜小胞(リポソーム)の生成に成功し,DNAコンピューティング反応を内包する小胞型分子ロボット構築のための基礎ができた.分担者の尾上は,自己組織化するマイクロスケールのユニットの作製を行った.具体的には,上記マイクロ流体システムにより,直径約100 μmの磁性体を封入したヤヌス型のマイクロ粒子を形成し,周期的に変動する磁場内においてマイクロ粒子の駆動のダイナミクスを観察した.その結果,10 mT,20 Hzの歳差磁場内において,マイクロ粒子周囲に生じる磁力と流体力の相互作用による自己組織化パターンの形成に成功した.分担者の原は,細胞サイズの分子ロボット実現を目指して,化学振動反応であるBZ(Belousov-Zhabotinsky)反応を力学的なエネルギーに自励変換して駆動する自励振動高分子の合成を行った.様々な主鎖構造を有する自励振動高分子を合成した結果,高分子鎖の自励振動挙動を主鎖構造によっても制御可能な知見を得た.また,BZ反応基質(硝酸,マロン酸,臭素酸ナトリウム)や温度の変化に対する振動挙動への影響についても検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,分子ロボットのボディ開発において,マイクロ流体システムを利用することでの自己組織化するユニット(ボディ)の複雑化が研究課題であった.代表者の瀧ノ上は,プロペラ・リング等の複雑構造を有する粒子を生成する基礎技術開発,および,らせん構造を持つファイバーへの応用にも成功し,予定通りに複雑化技術の開発ができた.さらに,分担者の森田により中空構造の生成にも成功している.分担者の尾上は,磁性体を封入したヤヌス型粒子の構築を達成し,かつ磁場による自己組織化に成功している.DNAのハイブリダイゼーションを相互作用に用いることも計画していたが,より動的なシステムへのアプローチとして本年度は磁力の相互作用を自己組織化システムに導入することに成功した. また,細胞サイズの分子ロボットの作製にはその運動の動力源となる高分子鎖の合成が非常に重要となる.分担者の原は,その動力源となることを想定している自励振動高分子の制御因子について,主鎖構造やBZ反応基質濃度,温度の観点から研究を行った.今後,微粒子等に自励振動高分子を被覆することで,細胞サイズの分子ロボットへと進化させていく予定である. 以上のように,最終目的を達成するための研究進捗は順調であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
代表者の瀧ノ上は,細胞サイズのゲル粒子の相互作用ができるような系(多細胞化等)へ発展させていくとともに,鞭毛様マイクロファイバーの制御にも取り組む.分担者の森田は,ボディであるリポソームによる小胞型分子ロボットを発展させる.具体的には,リポソームにDNAコンピューティング反応を内包させ,外部刺激をトリガーにして反応が進むような仕組を開発する.分担者の尾上は,本年度に達成した変動磁場を利用した自己組織化システムを利用し,動的な構造構築システムの実現に取り組む.具体的には,複数種類の構造パターンが磁場の条件によって動的に変化する系の確立を目指し,動的自己組織化現象の物理的な要素の抽出に取り組む.また,昨年度より引き続き,DNAのハイブリダイゼーションなどの分子反応の相互作用への導入も検討する.分担者の原は,金微粒子などに自励振動高分子を被覆することで,化学反応を直接的に力学的なエネルギーに変換可能な細胞サイズの分子ロボットの作製を目指していく.これまで様々な主鎖構造を持つ自励振動高分子の合成および駆動制御に成功しているため,それらを適宜微粒子に被覆していくことで,様々な性能を持つ分子ロボットの作製を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験回数が当初予定よりも少なく済み,高価な消耗品の試薬・材料の費用が安く済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画をさらに迅速に遂行するために実験消耗品類の購入に充てる.また,得られた成果を論文誌等で公表するための費用に充てる.
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