研究課題/領域番号 |
26280098
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
玄 相昊 立命館大学, 理工学部, 准教授 (30344691)
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研究分担者 |
松原 崇充 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20508056)
大塚 光雄 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20611312)
下ノ村 和弘 立命館大学, 理工学部, 准教授 (80397679)
有木 由香 立命館大学, 理工学部, 助教 (80553239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動学習 / ヒューマノイド / ロボットビジョン |
研究実績の概要 |
【理論】 理論面で特に大きな伸展があった。本研究においては、人から教示される運動を人型ロボットで実現する際に、必ず全身バランスを考慮する必要がある。この問題に対して従来は、「教示軌道の追従」と「バランス維持」の二つの目的を同時に満たす運動を学習、もしくは、最適化計算で求めるが、精度と計算量の面で実用には不十分であった。この問題に対して本研究では「教示軌道の追従」と「バランス維持」を分割して考慮するという、新しい発想に基づく見まね学習法を開発した。まず、ロボットに様々な動作を行わせ、転倒せずに実行可能な状態遷移を学習しておく。そして、教示軌道が与えられた際には、実行可能な状態遷移のみをつなぎ合わせることで見まね学習を達成する。後者の計算は、近年発見されたKullback-Leibler制御と呼ばれる確率最適制御理論に基づいて定式化されており、リアルタイム計算が可能である。本年度は1リンクロボットと小型ロボットNAOの物理シミュレーション により、その基本的有効性を確認し、国際会議に論文投稿した。 【システム構築、実験】 実験システム構築で大きな進展があった。まず、腕を除いたロボットハードが完成し英文誌に論文投稿することができた。次に、ピッチ軸とロール軸の傾斜を自在に操作可能なバランス揺動装置を構築した。さらに、運動補助のための5自由度軽量油圧マニピュレータを設計製作し、単体の動作確認に成功した。 また、ロボットヘッドを単独で構築し、マーカーベースのカメラの位置・姿勢氏計測を行った。FPGA によるパイプライン処理によりカメラのフレームレート30fps に対して1 フレーム以内の遅延で位置姿勢を計算できた。今後ヒューマノイドのバランス制御に応用できると期待される。これと並行して、FPGAを用いない視覚フィードバックによって両足で動的バランスを保つ実験に成功し、国内学会で論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予期していなかった見真似学習の枠組みが次々と提案されている。ただし、実機に適用するに足るアルゴリズムに成長していないため、実装面でのバックアップとフォローが必要である。 実機の整備についても大きな進展があったが、院生の配置とマネジメント不調のため、当初予定していた片脚バランスでの高速運動の実験ができていない。急いで体制を立て直したところである。
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今後の研究の推進方策 |
【理論】 昨年度提案した見真似学習の枠組みは理論的には新しいが、低次元化によってどれだけ実用的な方法に整理されるか未知数である。引き続き全身ヒューマノイドロボットのシミュレータ上の検討を行なっている。最終的には提案手法を発展させ、低速から逐次的に高速運動を獲得する学習プロセ スの計算論を開発するとともに、人サイズのヒューマノイドロボットを用いた実験を行う予定である。現在、実機実装の予備実験として、油圧マニピュレータで接触を保ちつつ教示軌道に追従する簡単なタスクを例題にして実装上の問題を洗い出している段階である。 さらにもう一つのバックアッププランを用意して進める。これは必ずしもデータ駆動の見真似学習ではないが、具体的には最新の方策勾配法を導入し、位相軸に沿った強化学習課題として、全身運動に適用する。ZMPをベースにバランスを評価し、遅い動作から早い動作への学習を検討している。こちらも最終年度である本年度中の実機適用を目指す。他の強化学習の例に漏れず、状態とポリシーの選び方が鍵となるので、そこに教示の効用を見出したい。 【システム構築、実験】 昨年度の成果をもとに、本年度はカメラを用いた打撃ターゲット追尾実験を行い、腕でバランスのアシストを保ちながら、足でのターゲット打撃運動を行う。教示された位相上の軌道に追従させ、その成否を打撃インパクトとバランスの度合いによって評価する。スピードを徐々に増していくと、動的効果によってバランスや目標への到達に誤差が増える。そこで、位相上の補償トルクを繰返し学習アルゴリズムによって学習し、教示軌道を忠実に再現しつつ、バランスと打撃の誤差を収束させることを試みる。このようなアシスト付全身運動学習の実機デモを成果としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた双腕アームのうち慎重を期して片腕だけを試作して動作確認を行ったため、物品費の支出が保留となった。 また、予定していた国際会議についてもタイミングがずれてしまったため、出張が保留となった。論文を投稿し、結果待ちである。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年保留した双腕ロボット製作分と、最終成果発表のための論文投稿を予定しており、過不足なく執行できる予定である。
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備考 |
プロモーションビデオの中で本研究で目指しているヒューマノイドロボットにおける全身運動の教示について紹介している。ロボットについても「研究紹介」ページで順次ビデオを交えて成果をアピールする予定。
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