研究課題/領域番号 |
26280099
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
多田 充徳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究グループ長 (70392628)
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研究分担者 |
中村 俊康 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (70265859)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 屍体実験 / モーションキャプチャ / 母指 / 関節運動 / 関節固定 |
研究実績の概要 |
二系統の実験を実施した.一つが解剖学的に正確な母指の運動学を明らかにするための実験であり,もう一つが正中神経麻痺や変形性CM関節症に対する適切な手術方法を検討するための実験である.いずれの実験においても,マーカを設置した後にCTを用いて屍体の画像を撮像し,骨とマーカの位置関係をモデル化した. 前者の実験では,関節に変形がない未固定屍体標本を用いて,内在筋の活動レベルが外在筋による母指の関節運動に与える影響を計測した(例えば,短母指屈筋と長母指屈筋の関係など). 後者の実験では,いくつかの対立再建法,CM関節固定,そして大菱形骨除去など,様々な術式を施した未固定屍体標本を用いて,母指の関節運動を計測した.正常屍体との比較が容易になるように,内在筋の活動レベルと外在筋の駆動距離については最初の実験と同じ設定を使用した. 全ての屍体に対して解剖学的に同じ意味を持つ座標系で運動を記述できるように,CTから復元した骨の形状と計測した運動を用いて基準座標系を決定した.例えば,固定された尺骨の第一慣性主軸方向がx軸,長母指屈筋による最大屈曲位の末節骨重心からx軸におろした垂線方向がy軸のような座標系を定義することで,屍体間で運動の比較が厳密に行えるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究を実施できた.筋駆動装置については,前研究で使用したものを流用した.追加実験を実施するために,これと並行して力制御可能な新規駆動装置の開発も行った.
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今後の研究の推進方策 |
正中神経麻痺や変形性CM関節症に対する適切な手術方法を検討するために,いくつかの対立再建法,CM関節固定,そして大菱形骨除去など,様々な術式を施した未固定屍体標本を用いて,母指の関節運動を計測する.同一の屍体に対して,なるべく多くの手術が行えるように,その順番を最適化する(例えば,大菱形骨除去を行うと元には戻せないので,この手術は最後に行う必要があるなど).計測したデータを先の実験と同じ方法で解析する.この後に正常屍体と手術を施した屍体に対する実験結果を比較することで,ヒトを特徴付ける対立運動を最も良く再建できる術式や,CM関節固定や大菱形骨除去が関節運動域に与える影響を定量化する. また,構築した母指の運動学モデルを用いることで,与えられた筋活動に対する関節運動を計算できるようにする.このモデルに対して,上記手術と同じ拘束条件を設定し,実験から得られた最適な術式や,関節運動域に与える影響が予測できるように,計測データに対するモデルの整合性を高める.最後に,運動学モデルの構築に使用していない計測データとの比較シミュレーションを実施することで,その予測精度を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
制御系の構築に留めたため,筋駆動装置のモータを1式しか購入しなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
追加実験を実施する前に,必要自由度数のモータを購入する.
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