研究実績の概要 |
本研究は、他者のアシストを上手に引き出しながら、合目的的な行為を遂行する関係論的な行為方略を備えるロボット(=関係論的なロボット)の概念を多様な領域に展開し、その効果を明らかにするものである。 本年度の具体的な成果として、(a)モジモジしながらティッシュを渡そうとするロボット〈iBones〉を構築し、人の手助けを引き出しつつ、比較的シンプルな機構により目的を実現できることを示した、(b) 聞き手のアシストを上手に引き出しながら、発話を組織するロボット〈トーキング・アリー〉において、聞き手の状態に合わせた適応的な発話選択機構を実現し、その効果を検証した、(c) 言葉足らずな発話により、聞き手からの助け舟を引き出し、一緒に会話を組織するロボット〈Muu〉の有効性を検証した、(d)手をつなぎながら歩くロボット〈マコのて〉において、つないだ手を介して意思疎通を行う機構を構築し、〈並ぶ関係〉でのコミュニケーションの効果を検証した、(e)これらの枠組みを自動運転システムとドライバとのインタフェース〈NAMIDA〉に展開し、お互いの〈弱さ〉を補いつつ、その〈強み〉を引き出すような協調システムとしての効果を検証した。 これらの成果を一般書(『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』、講談社現代新書)、専門書(『不便益 ー 手間をかけるシステムのデザイン』、共著、近代科学社)にまとめた、また論文誌や国際会議(Ro-man2017, iHAI2017)に投稿し、採択された。また、本研究で進めた〈弱いロボット〉の提唱・振興に対して、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」(科学技術振興部門)を受賞した。さらに、ヒューマンインタフェースシンポジウム2017 最優秀プレゼンテーション賞、HAIシンポジウム2017 最優秀ポスター発表賞などを受賞した。
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