研究課題/領域番号 |
26280105
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五斗 進 京都大学, 化学研究所, 研究員 (40263149)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗原変異 / 比較ゲノム / 遺伝子ファミリー / 進化 / 病原微生物 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、病原性原生生物の抗原変異遺伝子配列の収集と系統解析を進めるとともに、上流塩基配列とコドン利用頻度を解析し、発現機構の解明を目指した。
抗原変異遺伝子配列の収集に関しては、平成27年度にKEGG Ortholog Clusterデータベースから抽出した21のマルチ遺伝子ファミリークラスタについて、既知の抗原変異遺伝子を含む190のクラスタとともに整理し、各遺伝子ファミリーに代表的なクラスタについては系統解析を行った。その結果、特定の生物種でのみ特異的にパラログが生成するものが複数得られた。また、新たに四日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫のゲノム論文が報告されたため、抗原変異遺伝子群および関連情報をGeneDBから取得した。今後の解析に利用する。一方で、その他の配列解析は引き続き検討中である。
平成28年度は、抗原変異遺伝子自体の解析に加えて、系統解析手法の機能予測への応用、および、主要宿主であるヒトの遺伝子変異に関する解析で進展が得られた。前者に関しては、マルチ遺伝子ファミリーの一つである、Ⅲ型ポリケチド合成酵素(PKS)を、ゲノムが決定された生物種から網羅的に取得するとともに、機能既知の遺伝子を文献から網羅的に集めた。パラログ遺伝子群の機能分類を促進するために、Ⅲ型PKSの反応分類方法を確立し、系統解析結果と対応付けた。その結果、系統関係だけでは対応付けできない機能が明らかになったため、立体構造情報から得られた相補的に変異する配列上の位置を用いた機能予測法を開発した。また、後者に関しては、HapMapデータのアフリカ由来、ヨーロッパ由来、アジア由来の人種間の差から古い年代に確立したハプロタイプブロックを抽出するためのパイプラインを開発し、そのブロックに保存されている遺伝子群とマラリア感染の関係の解析に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた抗原変異関連遺伝子ファミリーのデータ収集については、一層の進展が見られたが、超可変部位の解析と上流配列の解析については、引き続き方法論の再検討を進めており、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き、病原性原生生物の抗原変異遺伝子配列の収集、可変部位を考慮した系統解析、上流塩基配列解析、コドン利用頻度解析をさらに進め、発現機構の解明を目指す。その際に、平成27年度に解析したヒト多様性をマラリア原虫の地域特異性と関連付けて進める。系統解析については、PKSマルチ遺伝子ファミリーでの解析方法も利用しながら、引き続き進める。最終年度として、得られた結果を論文としてまとめるとともに、varDBを最新情報に更新する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算に用いるために購入予定であったPCの代わりに、京都大学のスパコンを利用することにしたため、PC分は不要になった。研究代表者が2月から他機関に異動した関係で、予定していた学会出席を取りやめたため、予定していた旅費の使用が減った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、varDBの整備を充実させるためにシステム開発を外注する。また、PCも1台購入する。引き続き論文投稿準備を進めるとともに、国内外での学会発表も行い、論文投稿料と学会参加費として使用する。
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