抗原変異は、様々な感染症を引き起こす病原微生物が、宿主の免疫系から逃れるために獲得してきた機能の一つである。抗原変異に関与する遺伝子はこれまで数多く同定されてきたが、病原微生物がどのような進化の過程を経てそれらを獲得してきたのか、またどのような発現機構で機能しているかについては未だ不明な点が多い。本研究では、抗原変異遺伝子の進化・発現メカニズムを解明することを目的として、ゲノムレベルのデータ収集と配列解析を行うとともに、必要に応じて解析ツールとデータベースを開発してきた。 抗原変異遺伝子配列の収集に関しては平成29年度も継続し、varDBで検索できるようにした。なお、研究代表者の異動に伴い、varDBのインタフェースを刷新するとともに新規にテストサイト(http://vardb.dbcls.jp/)を構築した。将来的には vardb.org に統合する予定である。またテストサイトには追加で収集したPlasmodium属の抗原変異遺伝子配列とそのアライメント情報、系統解析の結果を反映した。上流配列解析を含めた比較ゲノム解析ができるように、ライフサイエンス統合データベースセンターで開発されているTogoGenomeのAPIを利用し、ゲノム上の指定した位置の塩基配列を所得する仕組みをvarDBに組み込み、抗原変異遺伝子の上流配列を取得できるようにした。さらに、抗原変異遺伝子ファミリーの発現機構解明のためのネットワーク解析を進めた。ネットワーク可視化のツールについてはCytoscapeなど既存のツールを使用することが適当であることが判明したので見送った。平成29年度の追加項目とした、オーソログ対応については、KEGG OCデータベースを更新し、本研究で蓄積してきた知見を他の遺伝子ファミリーにも適用するための基盤構築を開始した。論文化については検討中である。
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