研究課題/領域番号 |
26280107
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
河田 佳樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70274264)
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研究分担者 |
仁木 登 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (80116847)
大松 広伸 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 副科長 (40415518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺がんの画像診断法 / 経時拡大CT 画像 / 肺がん病態の時空間的な解析法 / 肺がん候補の悪性度推定法 / 肺がん候補の予後予測法 |
研究実績の概要 |
がん死因第1位の肺がんの死亡率低下に肺がんCT 検診が有効であることが示されている.この検診は指摘される肺がん候補数(径3 cm 以下)が多く,非がんの頻度が高いことが示されており,高精度な肺がんの画像診断法の開発が求められている.本研究は大規模経時拡大CT 画像データベースを用いて肺がんの病態を時空間で解析して悪性度推定法及び予後予測法を創出し,この臨床システムを実現して臨床研究によって有効性を示す.1.経時拡大CT 画像,臨床・病理診断情報,予後情報を集積した大規模経時拡大CT 画像データベースの構築,2.大規模経時拡大CT 画像データベースを活用した肺がん病態の時空間的な解析法の研究開発,3.肺がん候補の悪性度推定法と予後予測法の創出,4.臨床システム開発と臨床研究の実施からなる.本年度は,主に1, 2に取り組み,データベース構築に向け協力医療機関の倫理審査委員会の承認を得て研究協力体制を確立し経時拡大CT 画像,臨床・病理診断情報,予後情報を集積した大規模経時拡大CT 画像データ収集を開始した.肺がん病態の時空間的な解析法の研究開発では,肺がん候補と肺動静脈血管,気管支,胸膜などの周囲既存構造を高精度に抽出して時空間的な変化を定量的に捉える手法と肺がん内の病態の特性を定量的に表現する手法の開発を開始し,鑑別・予後予測技術の基礎技術となる悪性腫瘍罹患ハイリスクグループの層別化法の開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は,(1) 経時拡大CT画像,臨床・病理診断情報,予後情報を集積した大規模経時拡大CT画像データベースの構築,(2) 大規模経時拡大CT画像データベースを活用した肺がん病態の時空間的な解析法の開発, (3) 肺がん候補の悪性度推定法と予後予測法の創出,(4) 臨床システム開発と臨床研究の実施からなる.この研究推進には医工学領域の連携が不可欠であり,研究組織は国立がん研究センターの肺がん診断・治療を専門とする医学者(1名),経時拡大CT画像の定量的解析を専門とする工学者(2名),研究支援者(1名)からなる.本年度は(1)-(3)に注力し,以下の通り取り組んだ. (1) 大規模経時拡大CT画像データベースの構築: 経時拡大CT画像と診断・病理情報や再発・死因の予後追跡情報の収集には個人情報保護法に関わるために医療施設の倫理審査委員会の承認を得て匿名化処理を施してデータ収集を推進させた. (2) 肺がん病態の時空間的な解析法の開発: 胸部CT画像(画素サイズ0.6mm)から血管系・胸膜構造に焦点を当てた胸部臓器の構造解析法の開発を進め,経時拡大CT画像に展開して高精度に肺がん候補と周囲既存個構造の抽出に適用して有用性評価に取り組んだ. (3) 肺がん候補と周囲既存構造の時空間的な変化を定量的に捉え,肺がんの病態との関連を解析する手法の開発を進め,肺がん候補の濃度情報を連続的な数値(リスクスコア)で表現する手法を開発して経時変化の解析行い,がん・非がんの経時変化に関連する特徴の存在を示唆する結果を得た(Proc. SPIE Medical Imaging, 2015. Vol.9414). 本研究「大規模経時拡大CT画像データベースを用いた肺がんの悪性度・予後予測の研究開発」に関する平成26年度の研究成果は,招待講演:2件,国際会議発表:2件,国内発表:4件である.申請時の計画通り概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26 年度に開始した(1)-(2)の研究課題を継続し,特に(3) 肺がん候補の悪性度推定法と予後予測法の創出に向けて研究開発に取り組む. (1) 経時拡大CT 画像,臨床・病理診断情報,予後情報を集積した大規模経時拡大CT 画像データベースの構築:データベース構築と運用については既存のシステムを発展させて進める (2) 大規模経時拡大CT 画像データベースを活用した肺がん病態の時空間的な解析法の研究開発:肺がん候補の位置・大きさ・濃度情報・辺縁性状・周囲既存構造との関係の定量的解析法の開発し,肺がん候補と周囲既存構造の時空間的な変化を定量的に捉え,肺がんの病態との関連を解析する手法を開発する. (3) 肺がん候補の悪性度推定法と予後予測法の創出: (3-1) 肺がん候補の悪性度を高精度に推定する画像因子を明らかにして悪性度推定法を研究開発する.肺がんの病態の時空間解析の結果(画像因子等)や診断・病理情報に基づいて肺がん候補を層別化し,多変量ロジスティック解析の統計的手法を導入してがん・非がんの区別に有効な因子を明らかにする.ROC曲線下面積(AUC)によって悪性度の予測精度を評価してブーストラップ法によってこれらの因子の妥当性を検証する. (3-2) 肺がんの予後を高精度に予測する画像因子を明らかにして予後予測法を研究開発する.術後再発しやすい肺がんの病態に即した時空間特徴を明らかにする.教師なし・教師ありの統計的機械学習の2つの観点から肺がんの時空間特徴,診断・病理情報と予後情報から肺がんの予後に関連する因子を見出す手法を開発する.時間依存ROC曲線下面積(Time-dependent AUC)によって予後の予測精度を評価し,ブーストラップ法によってこれらの因子の妥当性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の謝金支払いが完了していないため。 3月に納品となり、支払いが完了していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月に支払いが完了する予定である。
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