研究課題/領域番号 |
26280109
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
三分一 史和 統計数理研究所, モデリング研究系, 准教授 (30360647)
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研究分担者 |
尾家 慶彦 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50396470)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体イメージングデータ時空間解析 / 神経情報学 / 自励的同期活動 / 呼吸中枢 / 抑制性ニューロン / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
カルシウム指示薬OGB-1を用いたイメージングデータとGlyT2陽性グリシン抑制性ニューロンとGAD65陽性GABA抑制性ニューロンで特異的に発現させた蛍光タンパクのイメージ画像を組み合わせることにより、活動性の細胞を興奮性ニューロン、グリシン抑制性ニューロン、GABA抑制性ニューロンに分類しながら、細胞の位置を示す2値化画像を作成する画像処理方法を開発した。この2値化画像を用いると、イメージングデータすべてを解析するのではなく、細胞の位置にあるピクセルのみを計算するだけでよくなり、解析にかかる時間を1/10程度に短縮することができるようになった。 この方法により呼吸バースト毎に局所細胞外電位(LFP)信号を参照関数とした相互相関解析を効率よく行うことが可能となり、ほぼ全ての呼吸バーストにおいて規則的に活性化するニューロンは10%ほどで、大多数のニューロン(約70%)は不規則に活性化し、規則的に活性化するニューロンの最大振幅の時刻はLFPのピーク時刻から一定の遅れを保っているが、不規則なニューロンは最大振幅の時刻も不規則であることが分かった。ニューロンの種類による活動の違いを解析したところ、呼吸バーストの形成中では、グリシン抑制性ニューロンの後に不規則性の興奮性ニューロンが活性化し、それに引き続き、規則性の興奮性ニューロンとグリシン抑制性ニューロンの活性化が生じ、グリシン抑制性ならびにGABA抑制性の性質をもつ不規則性ニューロンは、さらに遅いタイミングで活性化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究初年度に光学イメージング計測に使用する遺伝子改変動物の国内実験施設における飼育・維持の準備に多大な時間がかかるように状況が変化したため、同種の動物を所持している研究連携先のドイツ・ゲッチンゲン大学において実験を行うことになり、渡航の調整のため研究計画の大幅な見直しが必要となった。また、ゲッティンゲン大学での実験結果のうち、レーザーアブレーション法による細胞除去の際に予想外の結果が得られ、結果検討のために追加実験が必要となったことも重なり計画が遅れた。 研究2年目には解析の重要な部分に用いる数値解析用のプログラミング言語のバグを開発元の業者とともに解消するために多くの時間を要し、これらの影響が研究最終年度までに解消することが困難となったため。
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今後の研究の推進方策 |
ニューロン間の結合性と因果性を実験的な方法と解析的な方法の結果を比較し、解析の妥当性を検討する。実験的な方法はレーザー光で特定のニューロンを焼却する方法である。ある興奮性ニューロンや抑制性ニューロンを焼却し、他のニューロンで活動が弱まったり、逆に強くなったものあれば、それらは焼却されたニューロンとシナプス結合を形成していたということになる。この結果については予想外の結果が得られたので、結果検討のために追加実験も行い予定である。解析的な方法では多変量自己回帰(VAR)モデルをイメージングデータに適用することにより、Granger因果性、ノイズ寄与率、インパルス応答関数を計算し、ニューロン間の情報の流れを定量化する。そして、VARモデルから焼却したニューロンを除外したときに影響を受けるニューロンが実際に焼却したニューロンから影響を受けていたものと整合性があるか検証する。生理学的な側面から解析結果を吟味し、Granger因果性、ノイズ寄与率、インパルス応答関数の推定精度を高め、呼吸リズムを生成するためのニューロンの同期メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間延長のため。
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次年度使用額の使用計画 |
ドイツゲッチンゲン大学での実験と打ち合わせのために約150万円、国際学会 Society for Neuroscience, The Oxford Conferenceにおける発表のための旅費、参加費に約80万円、論文掲載料、英文校正に約20万円、薬品、ソフトウエアなどに約50万円の支出を予定している。
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