研究課題
二つの独自開発技術、すなわち、脳に発現する全ての遺伝子の発現分布を、解剖学的形態を俯瞰する仮想3次元ex vivo 空間で測定する方法:Transcriptome Tomography(TT 法)と、小型動物の動きを高精度解析するモーションキャプチャー法(hMC 法)を用い、意志に基づく運動(随意運動)が進行性に障害され、不随意運動が現れるハンチントン病(HD)モデルマウスについて、発症前後で経時的に、脳内遺伝子発現分布と上下肢・体幹の動きを測定し、脳機能障害と運動異常との関連を解析する。これにより、脳高次機能障害での不随意運動の分子病態について、治療薬開発などに繋がる新知見を得て、最終的には随意運動中枢機能とその病態理解をめざして研究を行っている。結果はデータベース化して公開する。2014年度は、生後5週のHDモデルマウスについて、上記2つの方法及び脳MRIを実施し、脳の形態、遺伝子発現と、歩行や姿勢制御についてのタスクを負荷した場合の動きを測定した、同一週令のコントロールマウスと比較した。5週令では従来、行動異常や遺伝子発現異常は観察されていない。確かにMRIではコントロールに比べ著明な変化を認めなかった。ところが新規法で高精細にデータを取得することで、発症のごく初期の遺伝子発現レベルの変化、行動異常を検知することができた。このように新規所見を得ることができたので、当初の研究計画を一部変更し、次年度は更に、週令の若いマウスでの比較を試み、発症前に起こる分子レベルでの異常と、それによる随意運動障害の分子病理を解析する。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画のうち1)解析プログラムの改良‐1.遺伝子発現解析プログラムの改良については、脳領域選定法を変更する必要があるので(下記理由)開発がやや遅れているが‐2.MC 解析法の改良は予定どうり進んだ。2)運動データと遺伝子発現データの取得を、予定を変更して5週令で行った。2)を変更したことにより、従来法では観察できなかった病初期の行動異常と、遺伝子発現異常について観測できた。1)-1の解析プログラムの改良はこうした病初期の変化を精細に解析できる方法を検討中である。このように1)-1の遅れはあるが、予想以上に従来法では観察できなかった病態を明らかにできる可能性を示すことができ、全体としておおむね順調に進展している。
まず5週令HD・コントロールマウスの行動の逆運動学的解析、遺伝子発現解析を詳細に行い、次に、更に若いマウスでの実験を行う(3週を予定)。当初の研究計画よりも脳の発達期に焦点をあてた実験を行う事で、発症前に、神経細胞が進行性の変性変化を起こす前に治療的に介入する手段を探る手がかりを求める。
疾患モデルマウスの入手先を海外研究機関から理研に変更できたので、入手経費が減少したため。
27年度マウス測定等を当初計画より対象数を多くして行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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