研究課題/領域番号 |
26280113
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 豊 京都大学, 情報学研究科, 教授 (00135526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 待ち行列 / モデル化 / 解析評価 / ネットワーク / 情報システム |
研究実績の概要 |
遠隔で多数の機器から定期的な情報収集のための通信と緊急時などの非定期的な通信が混在する環境下では、これらを統合するためのハイブリッド通信方式が重要になる。所与のQoSを満たしながら最適な設計を行い、収容される機器数に関するスケーラビリティを議論するための数理モデルを提案し、併せてその性能解析手法の開発を行った。次にこれらの機器が移動する場合、および省電力のために間欠的に電源をONにする場合を考慮した数理モデルを考察し、その性能評価を行った。
患者、医療機器などの所在・位置情報把握のためにICタグを取り付けたシステムが医療の質および信頼度の向上に結び付くと期待される。このシステムでは情報収集を担うリーダが周辺のタグすべてからID情報を読み取る時間が重要な性能評価量になる。リーダは未知タグからパッシブな通信方式で送信を受けるため、コリジョンは回避できず、この解決のためのAnti-Collision プロトコルが重要な役割を果たす。本研究ではBFSA (Basic Framed Slotted ALOHA)方式とDFSA (Dynamic Framed Slotted ALOHA) 方式に着目し、この数理モデルを提案し、その性能解析手法の開発を行った。さらにより一層の効率化を目指して、空きスロットとコリジョンスロットの時間長を短縮した場合につき両方式の性能解析を行った。その結果、フレーム長を適応的に変化させることとスロット長を可変にすることでタグ読み取り時間が大きく短縮され, ICタグ読み取りシステムの効率化が図れることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する研究を集約した英文書をSpringer社から出版し、査読付き英文論文3編と和文論文1編を出版、査読付き国際会議論文1編を発表、その他口頭での発表を7件行うなど現在までの研究達成度は目標に十分到達していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後はコンテキストに応じて、ルーティング、トラヒック制御などに関し、より一層柔軟な情報通信方式の開発を目指す。このためにはネットワークの仮想化が重要であり、情報の転送と制御の機能分化によるネットワーク機能のデータプレーンとコントロールプレーンへの分離分割が必要である。この結果パケットフロー単位での所与のQoS制約に適切に対応したエンド・エンドでのトラヒック制御が容易に行われる。従来ではこのような制御を行うには大きな手間が不可欠で即応性に欠けたが、ネットワーク仮想化によりコントローラを介した適応的制御が可能になる。一方でコントローラに負荷が集中し、性能面でのボトルネックになる可能性があり、スケーラビリティへの懸念がある。これらの長所短所を総合的に考察するために数理モデリングによる検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算用PCおよびネットワークシミュレーション用PCを購入予定であったが、学内のスパコンおよび研究室内既設のサーバで代用が可能であることが判明したため、次年度に当初予定よりも多く予定している論文誌での発表経費と国際会議での発表に伴う旅費に持越し、研究成果のより一層の発表を目指すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文誌原稿作成に関わる経費と国際会議発表に伴い旅費が当初計画よりも膨らんでおり、これらに使用を予定している。
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