研究課題/領域番号 |
26280114
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
下村 芳樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (80334332)
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研究分担者 |
戸谷 圭子 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 教授 (20350308)
木見田 康治 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (60632495)
舘山 武史 愛知工科大学, 工学部, 准教授 (70336527)
千葉 龍介 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80396936)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サービス工学 / 設計支援 / サービス品質 / 価値共創 / 使用価値 / サービス品質シミュレーション / サービス設計 / サービス機能モデリング |
研究実績の概要 |
今年度は、「サービスの品質とそれに影響を与える属性の関係のモデル化手法」および「サービス品質を事前評価するためのシミュレーション手法」の二つの手法を開発した。これら二つの手法を開発するにあたり、「各要素の属性のばらつきを表現する確率分布モデル」と、これにより表現する「分布関数をシミュレータ上で設定するための方法」を併せて開発した。 「各要素の属性のばらつきを表現する確率分布モデル」の開発に際しては、対象サービスの業務データを統計処理し、属性値のばらつきを適切に表現する分布関数を複数の分布関数の組合せにより構成した。この結果を品質評価値と要素属性値の関係モデルに挿入し、サービスの品質と属性の関係モデルを構成した。 「分布関数をシミュレータ上で設定するための方法」の開発に際しては、場面遷移ネットの拡張として構成したシミュレータにおいて、属性値が一定であるという条件のもと、サービス提供の場面ごとに経時変化する品質値を計算した。さらに、属性値がばらつく条件のもとで、サービス品質値を計算可能とするための追加拡張を行った。 対象サービスにおける品質が、特定の属性の影響を受けることを前提に、属性値のばらつきを表現する分布関数をシミュレータに導入し、このような属性値を統計的根拠に基づいて確率的に決定できるようにした。これにより、品質の変化式における属性値が、分布関数に従ってシミュレーション毎に変化し、最終的に出力される品質値もこれに追従して変化することを表現した。このシミュレーションの繰返しにより算出される品質値を集計し、属性値のばらつきの影響を受けて品質値がどの程度変動するのかを可視化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、「サービスの品質とそれに影響を与える属性の関係のモデル化手法の開発」 および「サービス品質を事前評価するためのシミュレーション手法の開発」の二つの手 法の開発に取り組むとともに、これら二つの手法を開発するにあたり、その要素技術である「要素の属性のばらつきを表現する確率分布モデル」を構成し、これにより表現する「分布関数をシミュレータ上で設定するための方法」を整備した。 確率分布モデルの開発に際しては、対象サービスの業務データを統計処理し、属性値のばらつきを適切に表現する分布関数を複数の分布関数の組合せにより構成した。この結果を品質評価値と要素属性値の関係モデルに挿入し、サービスの品質と属性の関係モデルを構成した。 本シミュレータは、,場面遷移ネット(STN)と呼ばれるシミュレーション技法を拡張し用いたが、STN によりサービス提供の場面を記述し、各場面の活動に関わる人や製品等の要素をアクタとして記述するとともに、アクタにはその状態を示す変数として品質値や属性値保持させた。さらに、サービス提供の場面ごとに、各種変数の経時変化の数学モデル(微分方程式)と場面の遷移条件を設定し、簡易な微分方程式と条件式を記述可能な既存のSTN を拡張し、複雑な数学モデルで構成されるサービス品質値を計算することを可能にした。 さらに適用可能な対象サービスの範囲をより拡大するために、広域エリアにおいて提供される公共サービスに対する受給者の行動を把握するために不定点観測システムの構成を方法を新たに考案し、携帯端末上に開発したソフトウェアをインストールすることにより、特殊で高額な計測装置を用いることなく、当該サービスに対する顧客の評価結果を客観的かつ効率的に収集する手段を確保した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の事例検証により明らかになった課題に取り組むと共に、本事業の研究を総括し、研究成果であるシミュレーションおよび最適化手法を実際のサービスの改善設計に適用す 。まず、事例検証に関しては、シミュレーション結果の妥当性に関する検証を行う。実際のサービス提供現場における属性値のデータとそれらの属性値に対する品質値のデータセットを獲得する。これらのデータは、実現場におけるサービスの提供記録と顧客アンケートの結果から獲得する。 次に、以上により得た実際のサービス提供現場における属性値のデータを入力としてシミュレーションを実行し、その結果として得られた品質値と上記のアンケート結果として得られる品質値を比較・分析し、シミュレーション結果の妥当性を検証する。 続いて、以上の結果に基づき、実サービスに対する改善案の検討を行う。上記のシミュレーション結果に既開発の最適化手法を適用し、実際のサービス現場においてばらつきを低減する属性を決定する。次に実サービス提供現場に対するヒアリングにより、実際の品質値の変動が、設計時に意図した範囲に収まっているか否かを確認し、導出された改善案の有効性を検証する。 以上により、本研究が、高い品質を安定的に提供可能なサービスの設計を可能にすることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた動線解析システムおよびデータロガーとほぼ同等の機能を有する別製品およびその製品上で動作するソフトウェアの開発に変更することにより研究成果を達成したが、結果として僅かな差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由を踏まえ、平28年度に購入を予定してた物品構成を再検討し、別製品の購入に充当する。
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備考 |
本事業に関するものを含む研究業績の書誌情報を一覧を公開している。
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