本研究では,近年特に注目が集まっているビッグデータを利活用するためのデータアクセス基盤サービスの開発を行った.これは,ビッグデータを利活用する際に生じる問題点を,1) ビッグデータに対する効率的なアクセスを実現するためのデータストアサービス,2) 用途に応じたデータビュー導出サービス,3) ビッグデータの利活用を容易にするサービス指向データアクセスAPIの開発,の三種類のサービスで解決するためである. 三種類のサービスにおける本年度の研究実績は以下の通りである. 1) 昨年度までに開発したビッグデータ格納用データストアを用れば,ある程度まで問合せ処理速度を上げることができたが,更なる高速化を目指すためには,新しいハードウェアを用いたデータストアを用いる必要がある.今年度はストレージ・クラス・メモリ中に列指向データベースの更新処理を高速化するためのインデックスを用いる方式を提案した.これにより更新に要する時間が30%程度に短縮されたことが明らかになった. 2) 昨年度までに開発したMVを用いれば, データベースシステムのスループットを上げることができたが,これまでのデータベースシステムと比べると挿入スループットが低いという問題があった.今年度はインデックス更新処理を複数の計算機で並列化することでデータの高挿入スループット化を図った.この提案により,従来手法に比べ最高約50倍の高速化が実現できた. 3) 昨年度までに開発したMVaaSを実アプリケーションで利用し,各種サービスの開発を行った.MVaaSでは,ログデータの種類,検索範囲,集約関数等の要求をデータ仕様として与えると,1次データから仕様に準じた体現ビューを作成するサービスを提供することができるため,MVaaSを老人見守りサービスや屋内のロケーションサービス,コンテキスト・アウェアサービス等に利用し,その実用性を確認した.
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