研究課題/領域番号 |
26280126
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
西本 一志 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50313721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知的学習支援システム / 妨害による支援 / 知的活動支援 / 創造活動支援 / 漢字学習支援 / 発散的思考支援 / 語学学習支援 |
研究実績の概要 |
本年度(平成28年度)の研究計画は,1 妨害の手段とその組み込み手段(妨害感の緩和・隠ぺい手段)の研究開発,2 「妨害による支援」のデザイン指針をまとめて一般に公開,3 得られたたデザイン指針に基づき,さらなる応用対象に「妨害による支援」を展開,の3項目であった. 第1の項目に関し,28年度初旬に開発を完了した「漢字の形状記憶損失を防ぐ漢字入力システム」を対象として,その使用に伴う「字形の確認と修正のめんどうさ」に起因する忌避感を緩和し,積極的な字形確認を促すための手法として,ゲーミフィケーションの考え方に基づく仕掛けを導入した.すなわち,「誰が今,誤った字形の文字を気づかずにそのまま確定したか」という情報をリアルタイムに可視化し,同じオフィスに所属する同僚同士で共有する仕掛けを構築した.これにより,自分の失敗を他人に知られることを避けたいという心理的圧力が高まり,システムが出力する文字の字形確認をより厳密に行うようになると共に,めんどうさに起因する忌避感を軽減できることが明らかになった. 第2の項目に関し,京都大学の川上浩司教授を中心とする「不便益」の研究に関する複数著者による共著書籍の執筆を進めている.この中で私は「妨害による支援」についての章の執筆を担当しており,妨害による支援を実現するためのデザイン指針をまとめた.平成28年度末までに初稿が完成し,現在分担執筆分すべての集約・編集作業を進めている. 第3の項目に関しては,前年度から実施している第2外国語学習を対象として,遅延聴覚フィードバックを用いた支援技術に関する新たな研究を展開した.さらに,ブレインストーミングに代表される発散的なアイデア生成活動を対象とした,妨害的要素を採り入れた新たな議論支援システムや,気弱な人々の社交活動を支援するシステムを考案・実装し,その基礎的有用性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度に予定していた研究計画は,ほぼすべて達成した.唯一,第2の項目である「「妨害による支援」のデザイン指針をまとめて一般に公開」に関し,現在編集作業中の書籍の出版時期が29年度にずれこんでいるが,すでに原稿の執筆は完了しているので,大きな遅延は無いと考える. 第3の項目である「さらなる応用対象に「妨害による支援」を展開」に関しても,順調に適用対象が増えつつあり,しかもいずれの取り組みに関しても有用性を実証できている. 以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りに研究を進める.29年度(最終年度)の予定は,「さらなる応用対象に「妨害による支援」を展開」の研究項目を継続することと,研究全体の総括である.これまでの研究成果をもとに,最終年度の計画を粛々と進める予定である.
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