研究課題/領域番号 |
26281003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉本 敦子 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (50235892)
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研究分担者 |
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (50432224)
米延 仁志 鳴門教育大学, その他の研究科, 准教授 (20274277)
LOPEZ Larry 山形大学, 農学部, 准教授 (20374712)
星野 仏方 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (80438366)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | モンゴル / 年輪同位体比 / タイガ林 / 土壌水分 / 窒素循環 |
研究実績の概要 |
1.年輪酸素同位体比と窒素同位体比の分析ラインの立ち上げ (1)酸素同位体比: 北大で現有する極めて安定性が高い質量分析計(MAT253)を利用し、リファレンスガスを流さず、既知の同位体比をもつセルロースをリファレンスとし、COを使用しない酸素同位体比の分析方法を立ち上げた。(2)窒素同位体比:木材を燃焼させて大量に発生するCO2を吸収剤で吸収させ、窒素をフィンガートラップ(小さな体積のU字管)に捕集して濃縮する方法をたちあげた。 2.年輪幅と同位体比クロノロジーの作成 (1)モンゴル北西部(フクスブル湖周辺)2点、北東部(ヘンティ山脈)3点、ウランバートルの南東に1点を追加し、年輪幅クロノロジーを作成した。枯死木のサンプルを採取を計画していたが、残念ながら見つけることはできなかった。また、葉および土壌も年輪と同時に採取し、酸素同位体比の基礎となる土壌、枝、葉の水同位体比測定用サンプリングを行った。(2)中国内蒙古は、ロペスがハルビン(中国)を訪問し、北東農業大学のZhang氏と打ち合わせ、現地を視察した。 3.年輪幅測定と同位体比の測定 (1)年輪幅は北大、鳴門教育大、山形大で計測する。各サイト20本以上のコアを用いて年代と標準年輪曲線を決定し、年輪幅指数(標準化した年輪幅)を求めた。(2)炭素・酸素同位体比測定には、各サイトで典型的なインデックスを示すコア4~6本を選定し、現在、北大において炭素同位体比の分析を進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸素同位体比の分析ラインの立ち上げ、サンプリング、年輪幅計測など、予定していた実施項目はほぼ予定とおりに進んだ。年輪幅データは、偽年輪や消失輪が存在するため、予想通り、年輪の年代決定に時間を要したが、サンプル数を増やすことにより、偽年輪や消失輪の可能性のある年代に予想がつくようになり、現在までに年代はほぼ決まったと考えている。枯死木は予想通り見つからず、今後も継続して探すこととする。 また、中国内蒙古についても予定通り訪問し、一部サンプリングも実施した。
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今後の研究の推進方策 |
炭素同位体比の分析は、セルロースを抽出したものと材そのままの同位体比間に高い直線性が見られるため、セルロース抽出は行わずに分析を行っている。これは、本研究で対象とするカラマツは、セルロースとリグニンの割合が大きく変化することがないことを意味する。一方、酸素については、当初セルロース抽出を行った上で分析することを予定していたが、抽出のための粉砕が不十分だったり、粉砕による細粒化により回収率が落ちて同位体比に誤差が生じる可能性がある。そのため、現在、セルロース抽出したものと材そのままを現在比較し、高い相関が得られた場合は、セルロースを抽出せずに分析を行うことにする。リグニンとセルロースの割合の変化が大きくない場合は、炭素と同様、酸素同位体比についてもセルロースと材の間に良い相関が期待される。 窒素同位体比に関しては、土壌とカラマツ葉の窒素同位体比の解析において新たな事実を見いだした。葉の窒素同位体比の解析では、森林環境と草原環境で大きな差があり、草原環境で高い窒素同位体比となることがわかった。このことをふまえて、本研究最終年度までに年輪窒素同位体比を測定するサンプルを決定し、年輪窒素同位体比の分析・解析を行う事とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.ホスタイ国立公園シラカンバ林の現地調査を、直接経費受領前に実施した。その際、研究機関で立替えを行わなかったため次年度へ繰越しが発生した。 2.技術補助員の実働3月分の謝金が、翌年度の4月に支払いとなるため次年度へ繰越が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
1.今年度の旅費に使用する。 2.謝金支払いのため4月に使用した。
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