研究課題
モンゴル国北部・中国内蒙古の森林帯を対象地域とし、年輪幅と年輪炭素・窒素・酸素同位体比から、樹木生長の規定要因、水分環境および生態系の窒素同位体の過去100年間の変化を総合的に解析することを目的として、本年度は以下のことを実施した。ウランバートル近郊のサイトに設置した土壌水分計からデータを回収し、測器を回収した。また、追加的なサンプリングを実施した。年輪幅計測と同位体比測定:酸素同位体比は、昨年度、1つの樹木個体の年輪酸素同位体比が年輪コアごとにばらつくことがわかり、今年度はそのばらつきについて検討を行った。その結果、セルロースの抽出を確実に行うことによってばらつきを低減できることが明らかとなった。また、窒素同位体比については、次年度の分析に向けて、効率化をはかるため、分析ラインの改良を検討した。年輪幅と同位体比クロノロジーの解析に向けて、トレーサー実験による炭素アロケーションの解析を進めた。夏の前半・後半とも、その年に固定した炭素はその年の年輪形成に使用されることが明らかとなった。一方で、夏後半に固定した炭素は翌年の年輪形成にも同程度使用されており、年輪炭素同位体比の解析においてその年の状況だけではなく前年夏後半の状況も反映している。年輪同位体比解析はこの点にも留意し進めることとする。その他、モンゴルホスタイ国立公園の環境変動について調査を行なった。また、中国大興案嶺の年輪について分析を実施した。カラマツ窒素同位体比については、モンゴルではカラマツの葉の同位体比が、森林内の樹木と草原境界付近の樹木で大きな差があり、この差は有機物の分解様式の違いによることが明らかとなった。過去の森林土壌の窒素循環の指標として利用できる可能性を示している。
2: おおむね順調に進展している
酸素同位体比は、セルロース抽出を確実に行うことにより、ばらつきが低減できることもわかり、ルーチン分析を行うだけとなった。窒素同位体比についても、モンゴルのカラマツ窒素の変動要因を解明し、その成果をまとめた。
(今後の推進方策)酸素同位体比はセルロース抽出を行い、分析を行う。窒素同位体比は、分析サンプルの効率化をはかるため、ラインの改良を行ない、分析を完了させる。炭素、窒素、酸素、それぞれに解析およびデータの解釈を進めてきており、最終年度となる29年度は、全てのパラメータを比較し、NDVIを加えて総合的な解析を実施する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114(6) ページ: 1293-1298
10.1073/pnas.1618022114
The Holocene
巻: 26(10) ページ: 1646-1660
Vegetation History and Archaeobotany
巻: 25(6) ページ: 525-540
10.1007/s00334-016-0570-2
Isotopes in Environmental and Health Studies
巻: 52 ページ: -
DOI:10.1080/10256016.2016.1206093