H26年度の「みらい」による2週間の定点観測で採取した北極海水試料について、低濃度レベルの栄養塩測定を行った。北極海におけるナノモルレベルの栄養塩測定は本研究が初めてである。 測定の結果、窒素栄養塩は夏季上層では一様に低濃度であり、リン酸塩にみられるような上層上部と下部の濃度差はみられないこと、渦の通過などにより一時的に窒素栄養塩が供給されることがあり、生物生産を促進していることなどが分かった。
また、カナダの砕氷船による広域観測に参加し、化学成分の観測ならびに係留系の回収・再設置を行った。係留式の採水装置で採取された1年分の海水試料分析と他項目センサーのデータ解析を行った結果、まだ厚い氷におおわれている4月初旬から、表層の生物生産が急速に増加すること、1か月後には窒素栄養塩濃度が減少して生物生産は急速に衰退し、より栄養塩の豊富な下層での生産が始まることが明らかとなった。
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